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トリビア バックナンバー 1/2

ルサンチマン

 「ルサンチマン」(仏・ressentiment)という言葉をご存じでしょうか。

 「弱者が、強者への憎悪や嫉妬(ねたみ)を内心にため込んでいること」をいいます。

 医師は、高所得者の代表格でした。

 その昔、マスコミは、医者について「ぼろ儲け」「医は算術」などと、医師になることの困難さ、その仕事の過酷さなどを度外視して、的外れな批判をしたり、通常の医療行為を医療過誤であるかのように報道し、一般国民も、高収入の医師に対する嫉妬からマスコミのキャンペーンに乗ってしまいました。

 医師の診療報酬の切り下げなどが始まるとともに、医師の卵たちは、小児科、産婦人科など医療過誤訴訟の多い診療科目を選択したり、無医村など過疎地区で働くのが「あほらしく」なり、その結果、眼科や皮膚科など無難な診療科を選択する医師が増え、都会での勤務を望む医師が増えました。

 医師数の絶対的不足、小児科、産婦人科医師の絶対的不足という問題が起きました。
 今頃になって、医師数を増やそうとしても、一度少なくなってしまった医師数は、適正水準にもどりません。
 小児科、産婦人科医師の絶対的不足は、いくら「少子化」が進んでも、どのようにしても、適正水準にもどりません。

 国民が、困ったことになっているのですが、所得の多い職業である医師に対するルサンチマンから、マスコミの医師批判にのった国民自身の責任ということになります。


 今度は、(上級職)行政職国家公務員について、マスコミは、医師に対してやったのと同じことをしようとしています。

 基本的に、国家公務員の給与は高くありません。
 私の同級生に聞いても(最近は、東京での同窓会に出席しなくなりましたが)「びっくり」するほど薄給です。
 また、私は、裁判官時代、行政官長期在学研究員制度で2年ドイツに留学していますが、やはり、裁判官・検察官と、一般行政職公務員との差は歴然としてました。司法修習生の給与が、一般行政職公務員の3年目とほぼ同じでした。

 行政職公務員の方が、裁判官・検察官より、肉体的精神的に、ハードワークかも知れません。
 裁判官は、上司に命令されることがありません。検察官は、上司に命令されますが、先輩検察官です。
 これに対し、行政職公務員は、「国会議員」の方が命令する立場です。大抵、「国会議員」の方が能力は落ちます。能力の下の物からの命令は、精神的に相当きついようです。

 当然、退職後の天下りで、「元をとる」ことになるのですが、それを禁じてしまうと、(上級職)行政職国家公務員に、東京大学や京都大学のトップ層など優秀な学生が、外資系企業や戦略コンサルタント会社など高給の職場にいってしまうことになりかねません。

 結局、困まるのは国民なのですが、(上級職)行政職国家公務員の天下り後の高収入に対するルサンチマンから、マスコミの(上級職)行政職国家公務員批判にのった国民自身の責任ということになります。

 弁護士も同じかも知れません。

 いくら弁護士を増員をしても、過疎地に弁護士は増えないでしょう。
 単純に、事件がなく、割に合わないからです。
 今は、日本弁護士連合会が補助金を出して過疎地に事務所を設置していますが、もっと多く、過疎地に事務所ということになれば、弁護士会からの援助ではなく、国費の投入でしょう。

 また、裁判員制度の弁護人は、いくら法曹増員をしても増えないでしょう。
 報酬が、他の事件に比べて安すぎ、割に合うはずがありません。
 他の事件と同じくらい割の合うように、国選弁護の報酬を適正化すれば、裁判員制度の弁護人をする人は増えるでしょう。

 なお、弁護士増員の最大の「被害者」は、一生に一度あるかないかの訴訟の代理人弁護士が「はずれ」だったときの依頼者かも知れません。


 あと、不思議に思うのですが、ゴルフや野球選手などプロスポーツのの高給は、あまり批判されることはないようです。
 どこが違うのでしょうか?

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