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債務(借金)問題

債務・借金

住宅ローンの怖いお話

「ゆとり返済」をご存じですか

 旧公庫融資には当初5年間の返済負担を軽くする「ゆとり返済」があります。
 1 当初5年間の返済負担を軽くして、6年目以降の返済を多くする。
 2 元利均等返済で公庫融資(ゆとり返済)は返済期間が25年以上の場合、年金融資(ステップ返済)は返済期間20年以上で利用できる。
  もちろん、ゆとり返済を利用しない元利金等返済よりも払う利息の総額は増加します。

 これは、給与も物価も地価も「右肩上がり」であるということを前提としたローンでしょう。
 思うように、給与があがらない人は、相当苦労している方がおられます。
 また、これによる「破綻」も結構あります。通常、サラ金から借りて、住宅ローンを返済すると、弁護士に依頼したところで個人民事再生、弁護士に依頼しなければ、住宅を競売にかけられ住宅を失います。


 アメリカ発で問題となっている「サブプライムローン」とは、優良顧客(プライム層)向けでない、住宅を担保とする住宅ローンのことをいいます。「sub」ですから、日本やドイツ流に「亜」(中間的分類が必要なときの階級名で、その分類単位よりも下位の分類)で、「準」「プライム」と思ったら大間違いです。
住宅ローンで、債務者の信用力について、低所得であったり、延滞歴がありブラックリストにのっていたりと、日本なら貸すはずのない層が含まれ、一般的な特徴としては、貸付利率が通常の住宅ローンに比べて高くなり、貸付者がとる信用リスクも高くなります。そのため、貸付を行う側としては、貸付リスクの分散をどうするかが、通常の住宅ローンよりも重視されることになります。

 住宅の価格が上昇している局面では、返済の破綻は表面化しませんでした。

 金利が高いと、低所得者層の人は返済することができないので、サブプライムローンでは、最初の数年は金利を低く設定した低金利ローンとします。サブプライムローンの中には、最初の数年は、金利だけ払えばよいといった商品まであるようです。
 このため、サブプライムローンの借り手側は、購入した住宅の値上がり益により、新規に住宅を購入するなり、値上がりした住宅を担保にするなりして、新たなローンに借換え(最初の数年の低金利が適用されます)、それを従前のサブプライムローンの返済にあてていました。
住宅の価格が上昇せず、逆に下がるようになれば、当然、従前のサブプライムローンの一括返済はできませんから、新規のローンは組めません。
 そして、当初のローンの金利は、少したつと「はねあがる」のですから、低所得者層やブラックリストにのっている人に返済できるはずはなく、ローンは焦付き、住宅は競売にかかるという運命をたどります。

 日本の「ゆとり返済」により金利が上がることなど、「ちっぽけ」に思えるほど、無茶苦茶なことです。

 もちろん、日本のように、貸付けた債権を金融機関が持続けているなら、「焦付き」による被害は、貸付けた銀行にとどまります。もちろん、銀行が、多数の焦付きを出せば、日本経済全体が「ダメ」になるのは、経験済みのことです。

 アメリカのサブプライムローンの問題点は、サブプライムローンが、住宅ローン担保証券の形で証券化され、さらにそれらが債務担保証券の形に再証券化されて、機関投資家など投資家に販売されていたことです。
 サブプライムローンの金利は並はずれて高く(当たり前です)、格付け機関のつけた「格付」は、有料とされていたため、外国の銀行やヘッジファンドなども、これらを購入していた、あるいは、証券化されたサブプライムローンが組込まれた金融商品を多量に購入していました。
 これらの金融商品については、必ずしも構成要素にサブプライムローンが含まれていることを明示していなかったり、あるいは、リスク・ヘッジ不十分のため、金融商品自体が想定された利回りを下回ったり、元本自体の返済が不能となったりする例が浮上してきているのです。

 「アメリカ」の「サブプライムローン」で、債務担保証券を多量に購入していたドイツの1地方金融機関が事実上倒産することにはじまり、同様、債務担保証券を多量に購入していた、大規模なヘッジファンドや世界的に高い格付けを有する金融機関が大損失をこうむるなど、世界的信用収縮につながってしまいました。
 幾層もの証券化を通じて住宅ローン債権の本来のリスク特性が見えなくなっていた中で、市場参加者の多くがパニック的に極端なリスク回避行動に出たことが、今回の信用収縮を引起こしたともいわれています。
 日本の金融機関なども、報道されている程度の損失でとどまっているのか、また、奉加帳式に他国の金融機関援助の資金提供を強いられるのか不透明です。


 と話はずれてしまいましたが、日本の「ゆとり返済」も、賃金上昇、不動産価格の上昇がなければ、返済不能の人が出てきます。
 まさに、これから、「ゆとり返済」を利用した人の、返済不能が社会問題化してくると思います。


 なお、日本には「変動型金利」の「住宅ローン」があり、これも、「ゆとり返済」に負けず劣らず危険なものなのですが、現在のところ、日本の金利が高くなりそうにありませんので、問題は、さほど表面化していません。

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