本文へ移動

債務(借金)問題

債務・借金

買掛先会社の倒産

ある会社が破産したとします。

 一般債権(抵当権などの別徐権つき債権、公租公課、労働債権などの財団・優先債権)などは、優先的に配当されて満足を得ることもありますが、一般債権は、無配当、あるいは、ごくわずかの配当に終わることが多いです。

 時々「自分は破産した会社の債務者である、破産したから払わなくても良いのではないか」と法律相談を受けることがあるのですが(弁護士会や地方自治体主催の法律相談に多いですね)、そんなはずはなく、満額、破産管財人に支払わなければなりません。

考えてみれば当たり前の話で、破産管財人は、破産会社の財産を換価し(預金・保険の解約、不動産の売却、債権の回収)、集めたお金を、債権者に分配するのが仕事の内容ですから、破産会社に負債があれば、支払わなければなりません。
 なお、破産会社に対し、売掛債権も買掛債務もある場合、前者が後者を上回っていたら相殺の意思表示して、1円も支払うことなく配当はもらえますが、前者が後者を下回っていたら、相殺の意思表示をしても、差額は満額支払う必要があります。

 なお、破産したから債権の取立ては「甘くなるだろう」「ほっとこう」という考えは「甘い」です。
 管財人は弁護士ですから、平気で訴訟を提起してきます。訴訟の手数を考えて、「継続的入荷が期待できなくなったのに、全額払えというのは殺生や」「若干まけくれへん」という交渉はありますが、無視したり、半分にしてくれなどといおうものなら、容赦なく訴状が届くことになります。
 また、訴訟をして回収した部分のうち結構な割合は、破産管財人の報酬になりますから、破産管財人も真剣であることは覚悟しておいてください。一般の債権回収で弁護士がもらえる着手金と報酬の合計よりも、破産会社の売掛債権を訴訟で回収した管財人報酬の積増部分が一般に大きいことが多いので、なおさらです。

 なお、管財人の提起する訴訟は、一般的な訴訟より、受付や訴訟手続き段階で裁判所に便宜をはかってもらえます。

 民事訴訟法38条には以下のとおり定められています
「 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。
 訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。」

 通常の訴訟をするとき、複数の細々とした請求訴訟を管轄する地方裁判所に提起すると、「訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づく」とはいえないとして、本来の訴額の簡易裁判所に「ばら」で訴えてくれと受付段階でいわれることがあります。
 もっとも、被告が応訴すれば問題ないので「受付けて、担当部に回してくれ」ということになるのですが、被告が、訴訟引延ばしのため移送の申立てをすると、移送されてしまうことがあります。

 ただ、管財人として、複数の細々とした請求訴訟をまとめて管轄地方裁判所に提起した場合、受付で文句をいわれることがありませんし、被告が移送の申立てをしたところで、民事訴訟法16条の「地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる」という条文に基づき自庁処理され、移送されるという心配はまずありません。

 破産裁判所が、管財人である弁護士にお願いして仕事をしてもらっているのだから、本案裁判所が、管財人の便宜をはかるのは当然という理屈です。

 ですから、少額の債務でも、管財人は「どうせ」「ついで」ですから、平気で訴訟を提起してきます。
 普通は、弁護士は、少額の訴訟なんか嫌がるんですが、管財人という立場からすると「実入りはいい」「裁判所から便宜をはかってもらえる」「手柄をたてれば、次に割のいい破産管財事件が回ってくる」という、三拍子そろった訴訟ですから、少額だからといって安心できるはずもありません。

 裁判所からの呼び出し状が来る前に、管財人に、「端数まけてね」といって、さっさと支払ってしまうのが賢明です。

西野法律事務所
〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満2-6-8堂ビル407号
TEL.06-6314-9480
FAX.06-6363-6355
 
お気軽にご相談下さい

電話による法律相談は行って
おりません(土日祝日休)
9時~12時 1時~5時30分
TOPへ戻る