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債務(借金)問題

債務・借金

続マスコミの世間知らず

こんな新聞記事がありました。

「東京地裁によると、過払い金返還請求が大半を占める『不当利得返還請求訴訟』は平成16年は約2100件。交通や知財訴訟を除いた通常訴訟の提訴数2万8176件の1割以下だった。
 しかし、平成18年の最高裁判決が、利息制限法の上限と出資法の上限(29・2%)との間の「グレーゾーン金利」を事実上認めない判断を示し、返還請求が急増し、不当利得返還請求は08年は通常訴訟3万8716件中、約1万2900件になった」

 記事にいう「平成18年の最高裁判決」は以下の判決でしょう。

 最高裁判所・平成18年1月13日判決
「期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である」

 実質的に、貸金業法43条の「みなし弁済」の規定を「無効」とした判決です。
 しかし、この判決により影響をうけたのは「シティズ」や「エイワ」など、貸金業法17条、18条の書面の交付の規定を順守している、ごく一部の消費者金融のみです。これらの消費者金融にのみ打撃を与えたにすぎません。


 返還請求が激増することとなった本当の最高裁判所判決は次の判決です。

 最高裁判所・平成17年7月19日判決
「貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである」

 貸金業法43条1項の「みなし弁済」の適用を受けるためには、同法所定の「17条書面」「18条書面」書面の交付が必要です。
 しかし、ATMによる貸付をしている大手サラ金は、貸金業法17条、18条の書面の交付をしていませんから、貸金業法43条の「みなし弁済」の規定の主張すらできませんでした。
 具体的には、ATMのレシートには、貸金業法18条3号所定の「受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額」の「利息」「賠償金」「元本への充当」の欄が最初からありません。
 法律による記載の必要もない「次回返済日」や「次回返済額」は記載されているから、スペースがないという言い訳は通りません。
「受領額」と利息」を記載してしまうと、利息が「いかに高いか」が借主にわかってしまい、営業的に「まずい」から記載していないと言うのが本音でしょう。
 立法者の「そこまで納得して借りたのなら、利息制限法違反の高利には目をつむるか」という一番大切な部分を隠していたんですよね。
 ちなみに、ATM取引は平成5年ころから一般化しています。

 現実には、利息制限法違反の高利の金銭を借入れるような借主は、ATMのレシートはもちろんのこと、取引約定書さえ保管しておらず、取引開始の日すら客観的な証拠がありませんでしたから、消費者金融は、適当なところ(借換で区切りのいい数字になったところ)からの取引履歴を提出することによって、多少の減額はともかく、過払金返還の義務を負うことは避けられていました。
 もちろん、契約当初の約定書を保管している借主もいましたが、その場合、消費者金融は、あきらめて取引履歴を開示し、弁護士からの請求があると過払金は支払っていました。
 私の依頼者も、相当、返してもらいました。
 これは、ごくごく少数でしたから、消費者金融の経営に問題はありませんでした。
消費者金融が、「利息」「賠償金」「元本への充当」の欄がないATMのレシー トで、貸金業法43条1項の「みなし弁済」の適用があると信じていたならば、利息制限法に引きなおす必要はありませんから、取引開始時よりの取引履歴を任意に提出していたでしょうし、任意に不当利得を返済しようとせず、訴訟になっていたでしょう。

 最高裁判所が、消費者金融に取引履歴の開示義務を命じ、金融庁のガイドラインが改正されたため、消費者金融は、全借主に対し、取引開始時よりの取引履歴の提出を義務づけられたため、不当利得返還請求が、著しく増大したのです。


 ということで、新聞記者の程度、それをチェックする上司の無知が目立ちます。
 弁護士に聞いていたとしたら、過払いについての最高裁判所の流れを知らない弁護士に聞いたんでしょうね。
 あるいは「被害者面したい」消費者金融からの話でしょうか
 取引履歴の開示なんか認められるはずがないと「高をくくっていた」消費者金融の「判断ミス」で、いわば「自業自得」です。

 マスコミ報道は、私の専門分野でそうですから、他の分野も「誤り」がおおいのでしょうね。
 話半分で聞くのが安全のようです。

西野法律事務所
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