身近な法律問題
非正規被雇用者の増加
パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などを含みます。
期間を定めない雇用契約を締結する「正社員」とは異なります。
現実には、正規被雇用者の数がのびないのに、非正規被雇用者の数はのびる一方です。
ずっと正社員でいた場合と、ずっとパートなど非正規被雇用者をしていた人との間では、2億円の生涯賃金の差がでるともいわれています。
一般的に、正社員と比べ労働時間が短く、時間あたりの賃金が安いことが多く、もちろん労働基準法の適用範囲内ですが、かならずしも遵守(順守)されているわけでもなく、通常、福利厚生などの対象にもなりません。
つまり、非正規雇用の特徴は、正規雇用に対して、一般的に「時間あたりの賃金が安い」「雇用契約期間が短い」「福利厚生が不十分」「雇用が不安定」と、雇われる側としては、全くといっていいほど、有利な点はありません。
もっとも、主婦の場合には、自分の都合に合わせて仕事の時間や期間を調整でき、夫の被扶養者になれる時間の範囲で仕事をしたりすることができますし、派遣の場合、いろいろな職業経験多くの企業に触れて経験を積むことが出来るという利点も全くないというわけではありません。
一方では、非正規被雇用者の待遇を正規労働者(正社員)の待遇に近づけることも大切です。
ただ、正規被雇用者の数がのびないのに、非正規被雇用者の数はのびる一方というのには、雇用者の論理があります。
雇用者からすると、非正規被雇用者は、知識・技術を社内に蓄積しづらく、製造業では熟練工、サービス業ではいわゆるベテランが育ちにくい、あるいは、正社員と比べ会社に対する忠誠度・責任感が低いという不利な点もないではありません。
しかし、時間あたりの賃金が安く、退職金や社会保険を払わないことも多いため、人件費を抑制しやすく、需要や収益の変化に対応した調整を、職員の増減で行いやすいという利点は捨てがたいものがあります。
なお、正社員のクビはなかなか切れません。
判例上、解雇権濫用法理というのがあり、使用者の解雇権の行使は「客観的に合理的な理由」がない場合を欠き社会通念上相当として是認することが出来ない場合には、解雇権の濫用として無効になることです。
ある正社員が、多少能力が劣るとか、やる気がないというだけでは解雇できません。その正社員も先刻ご承知で、他の職場に移ろうとしません。
「辞めてほしい人ほど居座り」「辞めてほしくない人ほど辞めていってしまう」というというのは、経営者側から漏れる本音でしょう。
ということですから、ライバル企業との熾烈な競争を余儀なくされている企業や雇用主は、正社員を減らし、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員を増やしています。
ちなみに、ライバル企業などのない大阪弁護士会などでも、派遣社員を多く雇用しています。派遣期間が長期になりすぎると、正社員となることの申し込みをしないと行けなくなりますので、派遣されている職員も定期的に変えています。
大阪弁護士会が、弁護士会の元職員に、地位確認請求の仮処分をされ敗訴というわけにもいませんしね。
なお、大阪弁護士会の職員(正社員)の給与などは、通常の同規模の民間企業に比べて、はるかに優遇されいます。
アメリカなどは、簡単にレイオフ(解雇)ができるようです。
とすれば、非正規被雇用者ではなく、正社員を多く採用しても全く問題はありません。
どちらが合理的かは判断しづらいのですが、日本の場合、少し解雇の要件を制限しすぎているように思います。
私個人としては、製造業では熟練工、サービス業ではいわゆるベテランを育てるためにも、また、従業員の志気を高めるためにも、正社員を増やしやすい環境作りをつくるために、解雇の要件をゆるめることを考える時期に来ているという意見です。