身近な法律問題
不動産、法人、戸籍・住民票のコンピュータ化のデメリット
しかし、我々古くからの弁護士は「コンピュータ化により、顔が見えなくなった」とよく言います。
つまり、不動産登記にしてみれば、分筆や合筆がされない限り、不動産登記簿は、その土地、その建物の、生まれて(土地の場合は、最初の分筆登記)から現在までの「一生」の記録が残っています。
紙の登記簿は、抹消は、「×」をつけるだけですから、何が抹消されいてるかがわかります。
コンピュータ化された場合、抹消は、アンダーラインを引いて抹消の事実をしめすか、本当に全く見えなくしてしまいます。
なお、アンダーラインで抹消の事実が表示されるのは一部です。
土地や建物は、平穏無事なのもありますが、競売されたり、一度売却した所有者や、その関係者(姓が同じ)が買戻したり、波瀾万丈の一生(?)を送っているものもあります。
閉鎖された土地の謄本をみることもできるのですが、本来の紙の登記簿謄本時代なら、当然発見されていた事実が、コンピュータ化されたものだけを見ていたのでは、見落としてしまう可能性もありますね。
会社の登記簿については、コンピュータ化されていない時代の謄本は、一見しただけで「あれ、全く別目的の休眠会社を買うたんやない」などと気づくこともありました。
ちなみに、コンピュータ化されても、前の商号はアンダーラインを引いて出ます。三井住友銀行は、三井銀行でも、住友銀行でもなく、旧相互銀行のわかしお銀行から、三井住友銀行になっています。
これは、三井住友銀行の経営が苦しかった時代、子会社のわかしお銀行を存続会社とし三井住友銀行を消滅させる合併で、三井住友銀行が保有していた財産の約2兆円の含み益を帳簿上現実化させて、有価証券の含み損を一掃し経営の健全化を図ろうとしたための便宜のためです。
話がそれてしまいました。
特に、コンピュータ化で不便になったのは、戸籍謄本です。
利用する側からすると、何も便利になっていないのに、不便なところばかりが目立ちます。
紙の戸籍謄本は、抹消は、「×」をつけるだけですから、何が「抹消」されいてるか、わかります。
コンピュータ化された場合、記載の必要のないものは省略されてしまいますので、長男がいないのに二男がでてきたりしていて、かならず原戸籍を、取寄せて見なければならないなど、不便このうえありません。
もちろん、相続関係図をつくるときは、戸籍謄本、除籍謄本、改正前原戸籍謄本など全部取り寄せますから、省略されていようが、されていまいが問題ありません。
しかし、離婚訴訟などの時は、特に原戸籍など取り寄せなくても、いつ誰が生まれて、いつ死亡し、あるいは結婚や養子縁組により除籍されていることがわかれば十分ということもあり、除籍になった者が省略されてしまうコンピュータ化は、あまり歓迎すべきことではありません。
きょうだいは何人いるかすら、コンピュータ化された戸籍謄本で分からないことがあります。