身近な法律問題
不動産、法人、戸籍・住民票のコンピュータ化
以下に述べる不動産と商業登記については、第三者への公示が目的の一つ、つまり、誰でも見ることができるようにすべき必要性がありますから、誰でも、謄本や登記事項要約書・登記事項証明書をとることができます。
まず、不動産については、コンピュータ化以前は、管轄法務局に、紙の「不動産登記簿」のバインダーで閉じられた数多くのファイルがあり、訴訟などに必要なときは、認証された「不動産登記簿謄本」を請求していました。
なお、「不動産登記簿」のファイルは、誰でも閲覧請求ができました(1冊、500円の登記印紙が必要)。
権利関係や地番・所有者などがはっきりしている不動産は郵便で、権利関係のややこしい不動産については、弁護士自身が法務局に出向いて、ファイルを閲覧し、必要な不動産登記簿謄本を取得していました(原則1通1000円。10枚超過は5枚ごとに200円)。
コンピュータ化によって、不動産登記簿は、現在はコンピュータ化により磁気ディスクで組成されています。この登記簿はブックレス登記簿といわれます。
なお、ブックレスの登記簿を直接閲覧することはできず(ディスプレイを見ることができないという趣旨です。HDDを外から見ても仕方がありませんね)、その代わりに、認証された登記事項要約書というものが発行されます(原則1通1000円の登記印紙。10枚超過は5枚ごとに200円)。
なお、コンピュータ化にともなって閉鎖された不動産の閉鎖登記簿は、現在でも閲覧することができます(1冊、500円の登記印紙が必要です)。
なお管轄につきましては、法律事務所には、通常備え付けの本がありますが、お持ちでない方は、「大阪法務局の管轄」をご覧ください。
ちなみに、すべての不動産がコンピュータ化されているわけではありません。コンピュータ化されていない不動産については、従前のとおりです。
当該管轄の法務局に電話をかければ、コンピュータされているかどうか教えてくれます。
法人については、コンピュータ化以前は、管轄法務局に、紙の「商業登記簿」のファイルがあり、訴訟などに必要なときは、「商業登記簿謄本」「商業登記簿抄本」を請求していました。
謄本とは、一登記用紙の全部を謄写し、認証を得たものであり、抄本とは、一登記用紙の一部(商号、本店所在地、目的、代表取締役の氏名など)の必要部分だけを謄写して、認証を得たものです。
商業登記簿が、コンピュータ化により磁気ディスクで組成されている場合は、認証された「登記事項証明書」が発行されます(原則1通1000円の登記印紙。枚数によって異なります)。
登記事項証明書は、a「現在事項証明書」、b「履歴事項証明書」、c「閉鎖事項証明書」d「代表者事項証明書」に大別されます。
a の「現在事項証明書」については、(ア)現に効力を有する登記事項(イ)取締役、代表取締役、監査役、委員会委員など、および、代表取締役の就任の年月日(ウ)会社の商号及び本店の登記変更に係る事項で現に効力を有するもの、などを記載した書面に認証文を付したものです。
b の「履歴事項証明書」は、現在事項証明の記載事項に加えて当該証明書の交付の請求のあった日の3年前の日の属する年の1月1日から請求の日までの間に抹消された事項等を記載した書面に認証文を付したものです。
c の「閉鎖事項証明書」は、閉鎖した登記簿に記録されている事項を記載した書面に認証文を付したものです。会社が消滅している場合などの証明書です。
d の「代表者事項証明書」は、資格証明書にする証明書であり、会社の代表者の代表権に関する事項で,現に効力を有する事項を記載した書面に認証文を付したものです。昔は依頼者に「資格証明書」をよく取ってきてもらったものです。こちらの会社が訴訟提起をするなら、通常これで足ります。
a の「現在事項証明証」は、通常、弁護士が訴訟に必要なものです。
株式資本区、目的区、役員区、支店・従たる事業所区、支配人代理人区、その他などの□にチェックを入れます。
やみくもに、「レ」点をつけると痛い目に遭います。
銀行の支店などが出てくると、枚数が多く、登記印紙がバカになりません。
その他、一般企業でも、転換社債の部分が出たり、全く必要なものに登記印紙を貼るのは損です。
事案に応じて、必要最小限度、とるようにしましょう。
b の「履歴事項証明書」は、相手方や関係者が、かつて自分の会社の取締役だったことがあることなどを立証するため使います。
c は、昔こんな別会社を相手や関係者がつくっていたがあることなどを立証するため使います。
d は、依頼者本人が、法律事務所に持参します。代表者の住所氏名など、最小限度の情報しかありません。
なお管轄につきましては、法律事務所には、通常備え付けの本がありますが、お持ちでない方は、やはり「大阪法務局の管轄」をご覧ください。
ちなみに、不動産と同様、すべての法人登記がコンピュータ化されているわけではありません。コンピュータ化されていない法人登記については、従前のとおりです。
やはり、当該管轄の法務局に電話をかければ、コンピュータされているかどうか教えてくれます。
便利になったのは、不動産にせよ、法人登記にせよ、管轄する法務局に行かなくても、大阪地方裁判所東隣の「大阪法務局北出張所」 (ちなみに、この地図はすごいです。出張所の大きさが、裁判所より大きく書かれています)にいけば、その日のうちに、登記事項要約書・登記事項証明書が取得できるようになったことです。
なお、不動産については、管轄法務局でない法務局で取得する場合、かなり正確な情報が必要であり、少しでも不十分なときは取れません。本来の管轄の法務局なら、若干なら、法務局職員が、不十分でも調べてくれますが・・。
3ヶ月以上前の古い登記簿謄本(3ヶ月が、通常何をするにしても有効期限です)、あるいは、権利証をお持ちでしたら、ほぼ、確実に入手できます。
また、法人登記については、登記簿謄本に記載された、会社固有の会社番号(登記簿に記載されています)がかわらなければ、本店所在地を管轄する法務局に郵送しなければなりません。
全くの利害関係がないときは、電話で番号を教えてくれることもありますが、相手方などは、当然ながら「ノー」なので、本来の管轄法務局に郵送します。
確かに、便利になりました。
次に、戸籍・住民票関係についても、コンピュータ化されている地方自治体が増えてきました。
コンピュータ化されている地方自治体は、戸籍・住民票は、コンピュータにより磁気ディスクで保管されています。
コンピュータ化されていない地方自治体は、戸籍・住民票は、従前どおり紙ベースで保管されています。
ちなみに、戸籍謄本(全部事項証明書)とは、その戸籍全部の写しのことで、戸籍抄本(個人事項証明書)とは必要な方のものだけを抜き出したものです。
住民票の認証された写しも、「全部」(住民票に記載してある人全員の写し)と「一部」(必要な本人だけの写し)があります。
利用者としては、余りメリットはありません。
これは、一般の人は(弁護士も、自分の戸籍謄本を取るときは一般人扱いです)、自分や家族の同一戸籍など以外は、プライバシー保護のために取れません。
弁護士や司法書士は、職務上、第三者の戸籍謄本や住民票などを取れるのですが、郵便による場合は、職印を押捺し、法律事務所などを送付先にして郵送しなければなりませんし、弁護士が直接出向く場合は、弁護士バッジや日本弁護士連合会発行の身分証明書と、職印を持参する必要があります。
通常は、よほど急いでいない限り(相続放棄の期間を徒過しそうになって相談を受けたときなど)、郵送です。
コンピュータ化されたからといって、もよりの地方公共団体で、どこの地方公共団体の管轄であっても、戸籍謄抄本や住民票をとれるというものではありません。なお、大阪市の場合、区役所に行かなくても、大阪市役所で、各区の管轄する戸籍謄抄本や住民票をとることができるようになったくらいがメリットでしょうか。
不動産、法人については、コンピュータ化によって、間違いなく便利になりました。
しかし、コンピュータ化によって、弁護士が仕事をする際、不便になった点もあります。
不便になった点については、別のコラムで説明させていただきます。