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身近な法律問題

求刑を上回る判決

平成24年3月21日、大阪地方裁判所において、1歳の三女を虐待死させたとして、傷害致死罪に問われた父母の判決公判がありました。

 裁判長は「今回のような重大な児童虐待には、今まで以上に厳しい罰を科す必要がある」として、両被告に懲役10年の求刑を大幅に上回る懲役15年を言渡しました。
 裁判員裁判です。

 判決によると、両被告任は共謀し、平成22年1月、寝屋川市の自宅で、憲被告が瑠奈ちゃんの頭を平手で強打して床に打ち付けるなどの暴行を加え、平成22年3月に急性硬膜下血腫で死亡させたという犯罪事実です。

 量刑については、児童虐待が大きな問題とされている近年の社会情勢も、量刑の際に考慮すべきだと指摘し、暴行の態様は殺人罪に近く、検察側の求刑は事件の悪質性を十分に評価していないと結論づけました。

 大阪地方裁判所で、求刑を上回る判決は珍しいですね。
 東京地方裁判所なら時々あります。

 一般に、検察官が求刑するとき、本来求めるべき刑の2割増しして、裁判所は、求刑に8掛けして判決を言渡すというのが、裁判官と検察官の「暗黙の了解」だったという記憶があります。
 ちなみに、2割増しして8掛けすると96%(1.2×0.8=0.96)にしかなりませんが、誤差の範囲でしょう。

 弁護人としても「求刑より2割引いてもらったのだから」と控訴しないとの説得材料になります。


 本件ほど、職業裁判官と裁判員との意識の差がはっきり出た事件は珍しいでしょう。

 他人の子供を死なせた場合と、自分の子供を死なせた場合で一番違うのは何でしょう。
 他人の子供を死なせると、その両親が「黙って」いません。
 自分の子供を死なせた場合、特に、両親がしっしょになって死なせた場合、「黙って」いないはずの「親」がいません。

 職業裁判官の場合、「他人の子供を死なせた場合」と「自分の子供を死なせた場合」とを比較すると、「他人の子供を死なせた場合」の刑罰が重いと考えます。
 懲役15年というのは、他人の子供の傷害致死の刑罰でしょう。他人の子供でも「殺人」ではなく「傷害致死」と認定する以上、15年でも重いかも知れません。

 恐らく、裁判員は「親しかすがるものがない子供が、まもってくれる親に虐待死させられた」「許せない」ということでしょう。

 どちらが正しいかはわかりません。
 ただ、高等裁判所では、量刑が若干軽くなるでしょう。
 また、大阪地方検察庁の捜査・公判を担当した検察官は、「検討委員会」で「つるし上げ」をくらっていると思います。
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