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身近な法律問題

告訴

 刑事告訴を弁護士に依頼すると、複雑なものでなくても、30万円以上の着手金がかかります。
 弁護士としては、それでも割に合わないと考えています。
 理由はおわかりでしょうか。

 まず、殺人、赤の他人同士の傷害、赤の他人同士の窃盗、赤の他人同士の詐欺などは、告訴する必要などありません。
 被害届を出しておけば、警察は動きます。
 わざわざ弁護士に頼む必要はありません。

 告訴を弁護士に依頼するという事件はどうでしょう。

 「窃盗」「詐欺」「横領」など、金銭がからむ事件が多いでしょう。
 警察は、弁護士による「告訴」を「民事事件解決の手段」とくらいにしか思っていないようです。
 つまり、告訴で圧力をかけて、金銭を得るという目的であると考えています。つまり、告訴は金銭を得る「手段」くらいにしか思っていません。

 本来なら、民事訴訟を起こせばいいのです。
 確かに、本当に「窃盗」「詐欺」「横領」に該当し、処罰そのものを求めたいという事件も多いです。
 しかし、証拠が確実であり、相手方に資力があれば、民事訴訟を提起して、強制執行をすればいいことになります。
 本当に、放っておいても処罰されるという「筋」の事件でしたら、「被害届」を出せば、虚偽告訴罪の危険を冒すことなく目的を達します。


 警察は、前記のとおり、告訴事件一般に「民事事件解決の手段」で「筋悪」とみています。
 
 私自身、会社が従業員の業務上横領事件について告訴したことがありますが(店員が、主として、レジを打たずに、代金を横領したもの)、警察はまともに動いてくれませんでした。
 本人は、横領を認める書類に署名・押印して、懲戒解雇もしています。
 確かに、「万引き」がありますから、在庫商品がなくなっているからといって、すべて、当該店長の横領とは限りません。
 ですから、氷山の一角ですが、小売りは全部除外し、他に卸売りしたため、商品の流れが明らかなものに限って告訴しました。これは、別の店舗に購入した記録がありますから、「万引き」ではなく、横領した商品です。

 それでも、逮捕・起訴までは2年以上かかりました。
警察官からいわれた言葉をはっきり覚えています。
「逮捕・勾留して、弁償を受けたからといって、告訴の取消をしたり、処罰を求めないと言う嘆願書は出さないと約束してほしい」「いったい自分たちが、何のために一生懸命働いたかわからなくなる」。

 つまり、逮捕・起訴され、本人(の弁護人)が、隠し財産を提供して示談を求め、あるいは、本人の家族が財産を提供して満足を得ると、告訴をした弁護士は、告訴の取消をしたり、処罰を求めないと言う嘆願書を出したりします。
 それが、金銭などの弁償をしてもらう「対価」ですから。

 一般に「告訴事件は筋が悪い」といわれています。
 つまり、告訴の動機が、本来は、被疑者の処分のはずなのに、被疑者や親族から、金銭を得る目的でなされることが多いからです。

西野法律事務所
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