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身近な法律問題

前科

刑法34条の2の1項には以下のとおりの定めがあります。
 「 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。」


 「前科が戸籍に記載される」と誤解されている方もおられるのですが、前科が戸籍に記載されることはありません。もちろん、住民票にも記載されません。

 「犯歴事務規程」という法務省訓令に基づき、罰金以上の刑(道路交通法など道路交通関係の法令違反の罰金を除きます)を受けた者については、本籍地のある市町村役場に保管される「犯罪人名簿」に一定期間記載されます。これは、全くの「紙ベース」です。
 なお、保管期間は、刑法34条の2と同一期間、例えば、懲役刑なら10年となっています。

 警察からの問い合わせがあると、本籍地のある市町村役場が「犯罪人名簿」に掲載されているか否か、あるとすれば、その内容についての回答をすることになります。
 ですから、警察など捜査機関以外に、前科があることを知られることはないといっていいでしょう。

 そして、理屈の上では、懲役刑を受けた者でも、10年経てば刑の言渡しの効力を失うのですから「全く前科がない」ということになります。


 ただ、市区町村による犯罪人名簿の作成管理とは別に、検察庁も「犯歴事務規程」という法務省訓令に基づいた犯歴管理を行っています。
 検察庁による犯歴管理の対象は、市区町村における犯罪人名簿の記載対象と同じです。
 私が裁判官になった昭和55年当時には、検察事務官作成の犯歴の表があったと記憶しています。現在は、コンピュータ化されていますから、すぐ出ます。

 検察段階では、「特定の者が、生まれてから現在までの間、有罪の裁判を受けこれが確定した事実の有無」を照会することができます。
 この犯歴管理の記録は、市区町村における犯罪人名簿と異なり、該当者の死亡によってのみ抹消されます。
 本来刑は消滅しているのですが、記録上は「ちゃんと」残っています。
 検察事務官が「特定の者が有罪の裁判を受けこれが確定した事実の有無」を照会してプリントアウトします。
 裁判になると「消滅したはず」の前科も書証として出てきます。

 あまりにも遠い昔のこととか、全く今回の犯罪と全く種類の異なる前科ならともかく、近い過去に同種の前科があるということは、量刑に影響します。


 自分が「犯罪を犯していない」ということの証明が必要な場合があります。
 例えば、外国の長期間滞在のビザを取得するとき、永住申請をするときなどに要求されれる場合です。

 私がドイツに2年間留学した際にも要求されました。
 結局、時間的余裕がないため「無犯罪証明書」の提出はできませんでしたが、出国前にビザは発行してもらえました。
 「裁判官」に「まさか前科はないだろう」と、当時のドイツ領事館職員が考えたのかもしれません。

 「無犯罪証明書」は警察署で取得します。
 前記のとおり、警察は、本籍地のある市町村役場が「犯罪人名簿」に掲載されているか否か、あるとすれば、その内容について照会できます。
 なお、市町村役場の「犯罪人名簿」との照合だけでいいかというと「違う」ということになります。それなら、本籍地のある市町村役場で十分なはずです。
 氏名を全く黙秘する被疑者・被告人がいます。「○○拘置所○○番」といった形で判決を受けますので、市町村役場の「犯罪人名簿」には掲載されません。
 ですから「無犯罪証明書」を取得するためには、全ての手指の「指紋」を警察(あるいは在外公館)で押して、警察で保管してある前科のある人などの指紋と照合し「○○拘置所○○番」という前科もないことを確認してもらう必要があります。
 指紋をとられるというのは、あまり、気持ちのいいものではないようです。私は、上記の経緯で、結局指紋を採られたことはありませんが・・

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