身近な法律問題
心理的に嫌悪される不動産
不動産の売買の際によくでてくる表現に「嫌悪施設」という言葉があります。
下水処理場、ごみ焼却場、火葬場、ガスタンク、火薬類貯蔵所等などの不快感、危険感を与える施設のことです。
また、広い意味では、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭など公害発生施設も含まれることがあります。
下水処理場、ごみ焼却場、火葬場、ガスタンク、火薬類貯蔵所等などの不快感、危険感を与える施設のことです。
また、広い意味では、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭など公害発生施設も含まれることがあります。
不動産の場合など、近隣に「嫌悪施設」があれば、当然、土地の値段は下がります。そもそも、そんな土地は買わないという人が多いでしょう。
物理的な場合は明らかでしょうが、心理的に「嫌悪」される不動産もあります。
土地・家屋の売買の時、そこで「殺人事件」や「自殺」があった場合はどうでしょう。
確かに、騒音、振動、異臭などはしません。
普通の土地、普通の家屋です。
しかし、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史による心理的な欠陥があることになります。
従って、「殺人事件」や「自殺」を知らずに、土地・建物を購入した買主は、物理的な欠陥でなくても、不動産に「隠れた瑕疵」(目にみえない欠陥)があるものとして、売買契約を解除できると解釈されるのが通常です。また、賃貸借契約の場合は、賃借人は、賃貸契約を解除できると解釈されています。
ですから、不動産業者は、重要事項説明として、買受希望者に「殺人事件」や「自殺」という事情を説明し、不動産売買、賃貸の仲介をしなければなりません。
仲介業者がいない場合は、売主・賃貸人が、説明しなければなりません。
ちなみに、売買された土地の建物において、8年前に殺人事件があって、建物が取り壊されて、土地の売買がされた場合に、売買契約は解除できず、5%の代金返還できるににとどまるとした大阪高等裁判所の判例(判例時報1971号130頁)があります。