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刑事事件と民事事件の立証
望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、Aさん(28)が、元TBSテレビ報道局ワシントン支局長のジャーナリスト山口敬之氏(51)に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が平成29年12月5日、東京地裁であったというニュースがありました。
訴状によりますと、Aさんは、平成27年4月、就職の相談をしようと、都内で山口敬之氏と会食し、その後、意識を失い、ホテルで望まない性行為をされたと主張しています。
この問題を巡って、警視庁は山口敬之氏を準強姦容疑で捜査しましたが、東京地検が嫌疑不十分で不起訴処分としました。
準強姦は、もともと立件がきわめて難しい犯罪類型です。
Aさんは、平成29年5月、検察審査会に不服を申立てましたが、東京第6審査会は、平成29年9月、「不起訴相当」とする議決を出しました。
刑事手続きは、よほどの新証拠が出ない限り、これで終了です。
ただ、刑事事件と民事事件は、立証の必要性が異なります。
刑事の場合は「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」が必要です。
無辜の被告人に有罪判決を下すくらいなら、黒に近い灰色の被告人に無罪判決を下す方がましだという政策的理由によります。
また、検察官は、2度、自分が起訴した事件で無罪判決をくらうと出世の道が閉ざされるとも言われています。
これに対し、民事事件は「証拠の優越」で足ります。
最高裁判所・平成11年2月25日判決(民集53巻2号235頁)は,「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」と判示されています。
ただ、これは医療裁判の訴訟の判決文で、いわば「書きすぎ」ですね。
普通、裁判所は、それほどの証明は要求しません。
そんなことを言っていると、自動車事故の過失割合の認定などできません。
事故態様により、過失割合が決まるのですが、最後の5%、10%は「えいや!」です。
裁判官にとって、しょせんは「他人事」です。
また、控訴審は、裁判官が間違えたときのために存在すると言っても過言ではなく、 適当に「えいや!」ができない裁判官は、心を病んで脱落していきます。
ですから、刑事で起訴されなかったからといって、民事で勝訴するとは決まっていません。
ちなみに、平成29年11月には、レイプ被害への捜査や、検察審査会のあり方を検証する国会議員による「超党派の会」が発足したそうです。
国会での初会合には、民進、立憲民主、希望、共産、日本維新の会、自由、社民、沖縄の風の野党各党・会派から約20議員が出席し、警察庁や法務省の担当者に経緯の説明を求めたが、「不起訴事案」などとして答弁を控えました。
当たり前のことです。
不起訴事件が、捜査機関から出るということはありえません。
捜査機関が漏らせば、処罰の対象となります。
例外は、交通事故の損害賠償の時に限り、検察庁は、実況見分調書を交付してくれます。
その程度です。