本文へ移動

雑記帳

雑記帳

「相続するとかえって損する!」相続放棄が約30年で6倍以上に激増

 司法統計によれば、平成元年に約4万件だった全国の家庭裁判所で受理された「相続放棄」の件数は、令和4年には過去最多の26万497件になりました。30年あまりで6倍以上に激増しています。
 とりわけ、ここ7年間の増加は著しく、1年に1万件ずつ増えている計算になります。

 相続放棄の法律相談というのは結構あります。
 家庭裁判所に定型用紙が備え付けられていますから、必要書類を確認して用意した上、出向くか、あるいは郵送することになります。
 家庭裁判所は、被相続人の最後の住居地を管轄する裁判所です。例えば、大阪市内の被相続人が死亡し、西宮市内の相続人が相続放棄する場合、神戸家庭裁判所尼崎支部ではなく、大阪家庭裁判所の本庁に申述しなければなりません。
 被相続人の死亡を知ったときから3か月以内という期限があることに注意すべきです。
 あと、相続放棄するかもしれないというときは、被相続人の遺産を処分すると、単純相続とみなされてしまいますから、被相続人の遺産に手をつけてはいけません。

 定型用紙には、相続放棄の理由が記載されています。その他を選択した場合は、括弧内に理由を記載します。
 1 被相続人から生前に贈与を受けているから
 2 生活が安定しているから
 3 遺産が少ないから
 4 遺産を分散させたくないから
 5 債務超過のため
 6 その他(       )

 財産と借金を比較して、財産が多ければ単純承認すべきであると考える人が多いかも知れません。
 弁護士の仕事をしていると、財産の方が借金よりも多いとして単純承認したものの、被相続人が、他人の連帯保証人をしていたために、借金を相続せざるをえなくなった人は悲惨です。

 被相続人本人の借金なら、サラ金や信販会社のカードがあったり、場合によっては督促状があったりして、比較的、借金の有無や金額の把握は楽です。
 連帯保証の場合は、主債務者が順調に返済しているときは請求されません。主債務者が返済できなくなったときに請求が来ます。被相続人が、連帯保証をしている金銭消費貸借契約書のコピーを保管していることは希です。
 場合によっては、相続人が自己破産しなければならない場合があります。
 被相続人が、個人事業を営んでいた場合が要注意です。連帯保証人に相互になりあって、事業資金を借りている場合が結構あります。

 なお、最近問題となっているのが、被相続人が住んでいた地方の土地・建物です。
 相続人は、被相続人が住んでいた地方の土地建物で生まれ育ったこともあるでしょう。
 都市部ならともかく、地方なら、「不動産」ならぬ「負動産」「腐動産」と呼ばれる土地建物もあります。
 不動産を理由にした相続放棄の相談があります。
 管理や解体の手間や費用を考えると、財産どころか事実上借金のようにしかならない土地建物が増えています。
 解体費用は、従前、よほど大きくなければ、1軒100万円から150万円でしたが、このところの人手不足等により、倍近くなっているところもあるそうです。
 また、まともな道路がなければ、重機が入りませんから、数万円、場合によっては1000万円程度かかる場合もあります。
 令和6年4月1日からは、相続不動産の登記義務が課されていますから、司法書士さんに支払う手数料ももったいないですね。

 預貯金が結構ある場合を除いて、被相続人の住居があるときは、遠く離れて都会にいる相続人は、相続放棄をして、親の近くに住んでいる きょうだいに相続してもらうというのも一つの手でしょう。
TOPへ戻る