雑記帳
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ドイツ経済がトランプ復活でさらに悪化する
ドイツのオラフ・ショルツ首相はSPD、緑の党、FDPの与党連合から、FDP党首のリントナー財務相を解任したことで、連立政権が過半数割れし、政権が崩壊して、平成7年2月にも、総選挙が予定されています。
SPD、緑の党、FDPの連立の成立は、令和3年末のことでした。
ところが、ところが、令和4年2月、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツを取り巻く環境は激変しました。
ドイツの連立政権は、侵攻当初、ウクライナにヘルメット限定の支援を表明して ひんしゅく をかい、その後供給したのが第2次世界大戦で使用した倉庫に眠るさびついた武器というありさまで、国内だけでなくヨーロッパ内にも困惑が広がりました。
こうした中、令和3年時点で防衛費をGDP比1.1%~1.4%に抑えていたドイツは、令和4年、北大西洋条約機構(NATO)の要求に応え、令和6年末までにGDP比2%に相当する717億ユーロ(約12兆円)の防衛予算を計上しました。
ただ、防衛増額を確保するためには、憲法110条により、財政赤字をGDP比3.5%未満に抑える必要があり、経済政策で意見が異なる連立3党政権を揺るがしました。
さらに、令和7年度の予算審議を控えたおり、防衛費増額でも「債務ブレーキ」の遵守に必要な90億ユーロの財政の穴埋めで対立が深まりました。
結果、リントナー財務相がショルツ首相と意見が合わず、ショルツ首相は財務相を解任しまいました。
もっとも政権崩壊の最大のきっかけとなったのは、ドイツ経済にとって救世主とされたアメリカ半導体大手、インテルがドイツに300億ユーロ規模の巨大な半導体工場を建設する計画を棚上げしたことが大きいともいわれています。
延期理由はインテル側に負うところが大きいのですが、トランプ政権誕生で、インテルはアメリカ国内工場拡張に舵を切った形です。3000人の新規雇用を見込んでいたドイツ政府がパニックに陥ったことは、政権維持に深刻なダメージをもたらしました。
ドイツは、トランプ再選により、経済的に3つのマイナス要因となる可能性があります。
1つは、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)脱退リスクです。
アメリカはNATOへの拠出金で突出していますが、トランプ氏は第1期政権でNATO加盟国の分担金増額を迫った経緯があり、今回の大統領選でも「自国を、本腰を入れて守る気のない国をアメリカは守らない」と発言しています。
NATOは、令和6年4月、大統領選に左右されない向こう5年間の、最大1000億ドルに上るウクライナ軍事支援計画をまとめました。
欧州議会は最大350億ユーロを承認していますが、実際の拠出額は加盟国間の協議を踏まえて決めるため、ドイツの負担が増すのは必至と見られています。
ウクライナ紛争で提供した武器、訓練、防空支援、人道支援などの総額は、令和5年までに約1130億ドルとも見積もられています。
アメリカのNATO離脱はドイツにとっては背筋が凍るような話です。
戦後、アメリカの守りあっての国防との考えが定着していたドイツにとって、ウクライナ紛争以降の自国自主防衛の流れに重なるアメリカの撤退は、決定的な方向転換を迫ることになる。停滞するドイツ経済を圧迫するのは確実と見られます。
ロシアに近接するリトアニアなどのバルト3国、ポーランドなどは、安全保障面でドイツを金銭面名とで「当て」にしていて、アメリカがNATO脱退するとなると、これまで以上のドイツの責任を要求してくる可能性があり、これはさらなる経済的負担につながりかねません。
2つ目は、ヨーロッパからの輸入品に対する関税の引上げです。
ヨーロッパでは目下「トランプの貿易戦争Ver2」は、1期目の貿易戦争Ver1よりも悪い結果をもたらすと見られています。
理由の1つは、アメリカから締め出された中国製品が世界市場にあふれるとの見方が広がっているからです。
事実、中国製電気自動車(EV)は、低価格でヨーロッパ市場を席巻していて、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、ヨーロッパにおける急激な中国製EV拡大と、EVシフト失速の打撃で国内3工場の閉鎖はまぬがれましたが、解雇せず自然減少を待つわけですから、若者の失業問題を発生させます。
今後、トランプ氏がアメリカに流入する中国製品を関税で締め出せば、生産過剰なさまざまな中国製品がヨーロッパに流れ込んできかねません。
ドイツ経済研究所の分析によりますと、新たな貿易戦争により、トランプ政権がEUに20%の関税を課し、EUが同様の報復措置を取った場合、トランプ大統領の4年間の政権下でドイツは1800億ユーロの損失を被り、ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツは、本来よりも1.5%縮小する可能性があると指摘されています。
すでに経済的に厳しい状況にあるドイツは、G7諸国の中で唯一、2年連続経済成長が見込めない国となります。
ドイツの経済成長の半分は常に輸出によるものだが、主要貿易相手国であるアメリカとの貿易摩擦は製造業にさらなる大きな打撃を与えるリスクがあるといえます。
3つ目のリスクは、エネルギー、気候変動リスクです。
ドイツは原発ゼロにこだわり、令和5年に温室効果ガスの排出量の多い石炭発電を残し、原発ゼロを達成しました。ロシアからの天然ガスが途絶える中、液化天然ガス(LNG)輸入のためのドイツ初の浮体式LNG基地建設を急ぎました。
重厚長大産業の比率の高いドイツでは、生産に必要なエネルギー需要が高く、エネルギー価格は産業を直撃します。
石油、天然ガスの採掘を奨励するトランプ政権は、ヨーロッパがアメリカ産天然ガスを買うよう圧力をかけてくることが予想され、これにドイツがどう対応するのかは見えません。
さらに、トランプ氏は過去に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を離脱しており、第2次政権でも離脱する可能性が取り沙汰されています。
こうした中、先進国から途上国に出す気候対策資金の1000億ドルからの上積幅が、ドイツの頭痛の種となる可能性が高いといえます。アメリカがパリ協定から離脱すれば、ドイツの負担率は確実に上昇すると見られているからです。
これらに加え、社会的リスクとしては、移民・難民問題があります。
ドイツのための選択肢(AfD)支持者の最大の争点は移民問題、特に難民などの増加による治安悪化問題で、これはアメリカの大統領選でも争点となっています。
トランプ再選はAfDを始め、右派ポピュリズム政党を勢いづかせ、社会リスクを拡大しています。
一方、ドイツでビジネスを展開する外国企業の中には意外なトランプ効果が追い風になり、ドイツ経済が閉塞感から抜け出せる可能性を指摘する声もあります。
ドイツが、「ヨーロッパ大陸の自主防衛」「ロシアとウクライナの停戦と和平協定」のアメリカからの一方的な押し付けに加え、「報復的な貿易戦争による損害」「トランプ氏によるヨーロッパの極右への接近」などの新たな現実に対処しなければならなくなる中、アメリカ依存を捨てることで平和ボケから脱し、官僚主義・社会主義からの改革に着手できる可能性があると指摘されています。
日本も、他国のことをいっていられません。
SPD、緑の党、FDPの連立の成立は、令和3年末のことでした。
ところが、ところが、令和4年2月、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツを取り巻く環境は激変しました。
ドイツの連立政権は、侵攻当初、ウクライナにヘルメット限定の支援を表明して ひんしゅく をかい、その後供給したのが第2次世界大戦で使用した倉庫に眠るさびついた武器というありさまで、国内だけでなくヨーロッパ内にも困惑が広がりました。
こうした中、令和3年時点で防衛費をGDP比1.1%~1.4%に抑えていたドイツは、令和4年、北大西洋条約機構(NATO)の要求に応え、令和6年末までにGDP比2%に相当する717億ユーロ(約12兆円)の防衛予算を計上しました。
ただ、防衛増額を確保するためには、憲法110条により、財政赤字をGDP比3.5%未満に抑える必要があり、経済政策で意見が異なる連立3党政権を揺るがしました。
さらに、令和7年度の予算審議を控えたおり、防衛費増額でも「債務ブレーキ」の遵守に必要な90億ユーロの財政の穴埋めで対立が深まりました。
結果、リントナー財務相がショルツ首相と意見が合わず、ショルツ首相は財務相を解任しまいました。
もっとも政権崩壊の最大のきっかけとなったのは、ドイツ経済にとって救世主とされたアメリカ半導体大手、インテルがドイツに300億ユーロ規模の巨大な半導体工場を建設する計画を棚上げしたことが大きいともいわれています。
延期理由はインテル側に負うところが大きいのですが、トランプ政権誕生で、インテルはアメリカ国内工場拡張に舵を切った形です。3000人の新規雇用を見込んでいたドイツ政府がパニックに陥ったことは、政権維持に深刻なダメージをもたらしました。
ドイツは、トランプ再選により、経済的に3つのマイナス要因となる可能性があります。
1つは、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)脱退リスクです。
アメリカはNATOへの拠出金で突出していますが、トランプ氏は第1期政権でNATO加盟国の分担金増額を迫った経緯があり、今回の大統領選でも「自国を、本腰を入れて守る気のない国をアメリカは守らない」と発言しています。
NATOは、令和6年4月、大統領選に左右されない向こう5年間の、最大1000億ドルに上るウクライナ軍事支援計画をまとめました。
欧州議会は最大350億ユーロを承認していますが、実際の拠出額は加盟国間の協議を踏まえて決めるため、ドイツの負担が増すのは必至と見られています。
ウクライナ紛争で提供した武器、訓練、防空支援、人道支援などの総額は、令和5年までに約1130億ドルとも見積もられています。
アメリカのNATO離脱はドイツにとっては背筋が凍るような話です。
戦後、アメリカの守りあっての国防との考えが定着していたドイツにとって、ウクライナ紛争以降の自国自主防衛の流れに重なるアメリカの撤退は、決定的な方向転換を迫ることになる。停滞するドイツ経済を圧迫するのは確実と見られます。
ロシアに近接するリトアニアなどのバルト3国、ポーランドなどは、安全保障面でドイツを金銭面名とで「当て」にしていて、アメリカがNATO脱退するとなると、これまで以上のドイツの責任を要求してくる可能性があり、これはさらなる経済的負担につながりかねません。
2つ目は、ヨーロッパからの輸入品に対する関税の引上げです。
ヨーロッパでは目下「トランプの貿易戦争Ver2」は、1期目の貿易戦争Ver1よりも悪い結果をもたらすと見られています。
理由の1つは、アメリカから締め出された中国製品が世界市場にあふれるとの見方が広がっているからです。
事実、中国製電気自動車(EV)は、低価格でヨーロッパ市場を席巻していて、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、ヨーロッパにおける急激な中国製EV拡大と、EVシフト失速の打撃で国内3工場の閉鎖はまぬがれましたが、解雇せず自然減少を待つわけですから、若者の失業問題を発生させます。
今後、トランプ氏がアメリカに流入する中国製品を関税で締め出せば、生産過剰なさまざまな中国製品がヨーロッパに流れ込んできかねません。
ドイツ経済研究所の分析によりますと、新たな貿易戦争により、トランプ政権がEUに20%の関税を課し、EUが同様の報復措置を取った場合、トランプ大統領の4年間の政権下でドイツは1800億ユーロの損失を被り、ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツは、本来よりも1.5%縮小する可能性があると指摘されています。
すでに経済的に厳しい状況にあるドイツは、G7諸国の中で唯一、2年連続経済成長が見込めない国となります。
ドイツの経済成長の半分は常に輸出によるものだが、主要貿易相手国であるアメリカとの貿易摩擦は製造業にさらなる大きな打撃を与えるリスクがあるといえます。
3つ目のリスクは、エネルギー、気候変動リスクです。
ドイツは原発ゼロにこだわり、令和5年に温室効果ガスの排出量の多い石炭発電を残し、原発ゼロを達成しました。ロシアからの天然ガスが途絶える中、液化天然ガス(LNG)輸入のためのドイツ初の浮体式LNG基地建設を急ぎました。
重厚長大産業の比率の高いドイツでは、生産に必要なエネルギー需要が高く、エネルギー価格は産業を直撃します。
石油、天然ガスの採掘を奨励するトランプ政権は、ヨーロッパがアメリカ産天然ガスを買うよう圧力をかけてくることが予想され、これにドイツがどう対応するのかは見えません。
さらに、トランプ氏は過去に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を離脱しており、第2次政権でも離脱する可能性が取り沙汰されています。
こうした中、先進国から途上国に出す気候対策資金の1000億ドルからの上積幅が、ドイツの頭痛の種となる可能性が高いといえます。アメリカがパリ協定から離脱すれば、ドイツの負担率は確実に上昇すると見られているからです。
これらに加え、社会的リスクとしては、移民・難民問題があります。
ドイツのための選択肢(AfD)支持者の最大の争点は移民問題、特に難民などの増加による治安悪化問題で、これはアメリカの大統領選でも争点となっています。
トランプ再選はAfDを始め、右派ポピュリズム政党を勢いづかせ、社会リスクを拡大しています。
一方、ドイツでビジネスを展開する外国企業の中には意外なトランプ効果が追い風になり、ドイツ経済が閉塞感から抜け出せる可能性を指摘する声もあります。
ドイツが、「ヨーロッパ大陸の自主防衛」「ロシアとウクライナの停戦と和平協定」のアメリカからの一方的な押し付けに加え、「報復的な貿易戦争による損害」「トランプ氏によるヨーロッパの極右への接近」などの新たな現実に対処しなければならなくなる中、アメリカ依存を捨てることで平和ボケから脱し、官僚主義・社会主義からの改革に着手できる可能性があると指摘されています。
日本も、他国のことをいっていられません。