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2024年バックナンバー

雑記帳

シリア「アサド政権」崩壊がもたらすロシアの深刻事態

 専門家も驚く速さでアサド政権は崩壊しました。
 ロシアはシリアを見捨てたのでしょうか、それともロシアでも打つ手がなかったほど政権が弱体化していたのでしょうか。
 いずれにしてもロシアの安全保障戦略における痛恨の大敗北です。
 シリアのアサド大統領が反政府軍に敗れ去った原因としてロシア軍の弱体化も指摘されています。結局はロシアの自業自得ということになるのかもしれません。

 シリアでは、平成23年から内戦状態に陥ったのですが、アサド大統領はロシアとイランの支持を得て反政府勢力を駆逐し、平成28年12月には北部の要衝であるアレッポを制圧し、軍事的な優位を確立しました。

 ところが、それから8年後の令和6年11月27日、反政府軍が奇襲による大攻勢を仕掛けると、政府軍は戦わず後退を続けました。その結果、わずか12日間で反政府軍は首都のダマスカスに入り、アサド大統領はロシアに亡命することになったです。
 令和6年11月27日に反政府軍は政府軍に大規模な奇襲攻撃を行ない、令和6年11月30日にアレッポを奪い、令和6年12月には中部のハマ郊外まで反政府軍は到達し、令和6年12月5日にハマが陥落しました。
 令和6年12月8日の午前11時過ぎ、ロイター通信が「反政府軍は首都のダマスカスに入り、アサド大統領は飛行機でシリアを脱出した」と報じました。

 アサド政権はイラン、ヒズボラ、そしてロシアの支援を受けていたからこそ反政府軍を抑え込めていました。
 しかし、イランとヒズボラはイスラエルの攻撃を受け、シリアを支援する余裕を失っていました。そして、何よりもロシア軍がウクライナ戦争で疲弊したことが最も大きな要因でした。

 シリアの反政府軍も、それを駆逐しようとするイラン軍もヒズボラも、いずれも満足な空軍戦力を持ちません。政府側も反政府側も陸上戦力で攻撃を仕掛けるより他に方法はなかったのです。
 一方のロシア軍はアメリカ軍に次ぐ、世界第2位の空軍大国です。
 シリア政府軍の兵力が不足し、士気が低下していたとしても、以前ならロシア空軍は反政府軍を空爆し、大きな戦果を得ていたでしょう。
 しかし、間隙を突いて反政府軍が大規模な奇襲をしかけた時、ロシア空軍に反撃する余裕は失われていました。陸上戦力もウクライナとの戦争で手一杯でした。
 つまりロシアがウクライナを侵略しなければ、長年の同盟国であるシリアを失うことはありませんでした。

 ロシアは、不凍港を求めて、18世紀から南下政策を進めました。
 紆余曲折はあるのですが、第二次世界大戦後の冷戦時代、シリアが反米・反イスラエル政策を採ったことから、当時のソ連はシリアと密接な関係を結ぶことに成功しました。
 ロシアは黒海から地中海に抜ける「橋頭堡」としてシリアをフル活用するようになったのです。
 ロシアは、旧ソ連の1970年代、シリアのタルトゥースに海軍基地を置き、地中海で唯一の補給・修理拠点として機能させました。さらに2010年代にはフメイミム空軍基地も建設しました。
 どちらの基地もロシアが中東各国やアメリカに睨みを利かせ、黒海から地中海を抜けてアフリカ各国などと貿易を行うシーレーンの確保に大きく寄与してきました。
反政府勢力が基地の閉鎖を決定すれば、ロシア海軍は、ウクライナ戦争による黒海艦隊を利用できなくなったのに続き、地中海でも重要な拠点を失うことになります。

 シリアの反政府勢力は「反アサド」だけで、イスラム原理主義とは無縁のグループから、アルカイダの影響を受けたグループ、イスラム国の残党など、多種多様なメンバーの寄せ集めと見られています。反政府勢力がシリアで権力基盤を確立した後、外交でロシアに対しどのような態度に出るかは不明です。もし新しいシリア政府がロシアの基地閉鎖を決定すれば、ロシアの安全保障政策が根底から揺らぐことになります。

 ロシアにとって、ウクライナはロシアの同盟国でしたが、今やEUやNATO加盟を要求し、反ロシアの立場を鮮明にしています。
 かつてロシアは東欧を全て友好国としてNATOに立ち向かいましたが、今やヨーロッパでの孤立は鮮明です。さらにフィンランドとスウェーデンもNATOに加入することが決まり、バルト海に展開するロシア海軍のバルチック艦隊も完全に抑え込まれることになりました。

 世界地図を見るとヨーロッパ大陸でも中東でも、バルト海でも地中海でも、ロシアが次々と封じ込められているのが分かります。これではウクライナ戦争でクリミア半島を正式に手に入れるなど戦術的な勝利を得たとしても、戦略的には全く釣り合わないことになります。
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