2024年バックナンバー
雑記帳
台湾の脱原子力発電
福島原子力発電事故以降、ドイツとともに脱原子力発電に踏み切った台湾が、頼清徳新政権発足後、「脱・脱原子力発電」を模索しています。
脱原子力発電は蔡英文前総統の時代から与党民進党の看板政策だっただけに、政治的にそれを覆すのは容易ではないとみられます。
しかし、AIブーム(AIは途方もなく電気をくいます。特にクラウドは電気を「爆食」します)と半導体好況で電力需要が急増する中、原子力発電なしで持ちこたえることが容易でなくなったからです。
台湾は製造業中心の産業構造を持ち、貿易依存度が高く、安定的な電力供給が重要です。世界的にも原子力発電は炭素を排出せず、経済性にも優れたクリーンエネルギーとされています。
しかし、前蔡英文政権は、令和7年に脱原子力発電を完了し、電力構成を石炭・ガス火力発電80%、風力・太陽光など再生可能エネルギー20%に再編する計画を決定しました。
台湾は、予定どおり、令和元年から令和5年にかけ計4基の原子力発電を閉鎖しました。
令和6年7月には第3原子力発電1号機の稼働が停止し、令和7年5月には2号機も閉鎖します。第4原子力発電は令和3年の国民投票で商業発電計画が否決され、工事が90%以上進んだ時点で中断されました。
令和7年には事実上脱原子力発電が完了します。
台湾は、原子力発電に代わるガス火力発電所を多く建設しました。
令和5年時点で発電量全体の44.1%をガス火力発電所が占めました。台湾は天然ガスの97%を輸入に依存しています。ウクライナ戦争勃発以降、ドイツが体験したように、ガスの国際価格高騰と供給難のリスクにまともにさらされました。
ガス価格の上昇に伴い、台湾電力の赤字が累積し、今年は大口の産業用電気料金を15%引き上げざるを得ませんでした。
台湾は、令和5年時点で再生可能エネルギーの割合はわずか9.5%でした。令和7年までに20%に増やすことは事実上不可能になりました。
台湾は、国土が狭く、風力、太陽光など再生可能エネルギー資源には限界があります。
台湾は、脱原子力発電が始まってから、慢性的な電力難に苦しんでいます。
数百万世帯が被害を受けた大規模な停電が4回も発生しました。
令和6年6月にもエヌビディアやフォックスコンなどが入居している台北の内湖科学園区一帯で停電が起きました。今年第2四半期(4月~6月)の停電発生件数は前年同期比で43.3%も増加しました。
脱原子力発電が完了する令和7年になると、台湾の電力難はさらに深刻化しそうです。 向こう3年間が大きなヤマ場で、夜間の供給予備率が7~8%まで低下する可能性があり、供給予備率が10%を下回れば、停電発生の可能性が高まります
また、原子力発電を開始すると行っても、8年間続いた脱原子力発電政策で原子力発電産業の生態系が崩れ、専門人材が大量流出しまいました。今すぐに、政策見直しを決めたとしても、原子力発電再稼働までは5年近い時間がかかることを意味します。
台湾電力原子力発電事業部の人員は平成30年の2529人から令和6年4月の1871人へと26%減りました。残る技術者も高齢者が中心です。
研究人材を教育する国立清華大学の工程システム学部では原子力専攻者が1学年で10人ほどにすぎないそうです。彼らでさえも卒業後は原子力発電が注目を浴びる米国などに留学するということです。台湾政府は小型モジュール原子力発電(SMR)など未来の新技術に積極的に対応したいと言っていますが、どんな人材でやっていくのかというのかという批判があります。
TSMCは、台湾半導体産業が空洞化するのではないかという懸念があります。
TSMCがアメリカに工場を建設したり、熊本に工場を建設したりするのは、台湾の地政学的危険のほか、台湾半導体産業に必要な電力がまかなえないと判断した結果であるといわれています。
脱原子力発電は蔡英文前総統の時代から与党民進党の看板政策だっただけに、政治的にそれを覆すのは容易ではないとみられます。
しかし、AIブーム(AIは途方もなく電気をくいます。特にクラウドは電気を「爆食」します)と半導体好況で電力需要が急増する中、原子力発電なしで持ちこたえることが容易でなくなったからです。
台湾は製造業中心の産業構造を持ち、貿易依存度が高く、安定的な電力供給が重要です。世界的にも原子力発電は炭素を排出せず、経済性にも優れたクリーンエネルギーとされています。
しかし、前蔡英文政権は、令和7年に脱原子力発電を完了し、電力構成を石炭・ガス火力発電80%、風力・太陽光など再生可能エネルギー20%に再編する計画を決定しました。
台湾は、予定どおり、令和元年から令和5年にかけ計4基の原子力発電を閉鎖しました。
令和6年7月には第3原子力発電1号機の稼働が停止し、令和7年5月には2号機も閉鎖します。第4原子力発電は令和3年の国民投票で商業発電計画が否決され、工事が90%以上進んだ時点で中断されました。
令和7年には事実上脱原子力発電が完了します。
台湾は、原子力発電に代わるガス火力発電所を多く建設しました。
令和5年時点で発電量全体の44.1%をガス火力発電所が占めました。台湾は天然ガスの97%を輸入に依存しています。ウクライナ戦争勃発以降、ドイツが体験したように、ガスの国際価格高騰と供給難のリスクにまともにさらされました。
ガス価格の上昇に伴い、台湾電力の赤字が累積し、今年は大口の産業用電気料金を15%引き上げざるを得ませんでした。
台湾は、令和5年時点で再生可能エネルギーの割合はわずか9.5%でした。令和7年までに20%に増やすことは事実上不可能になりました。
台湾は、国土が狭く、風力、太陽光など再生可能エネルギー資源には限界があります。
台湾は、脱原子力発電が始まってから、慢性的な電力難に苦しんでいます。
数百万世帯が被害を受けた大規模な停電が4回も発生しました。
令和6年6月にもエヌビディアやフォックスコンなどが入居している台北の内湖科学園区一帯で停電が起きました。今年第2四半期(4月~6月)の停電発生件数は前年同期比で43.3%も増加しました。
脱原子力発電が完了する令和7年になると、台湾の電力難はさらに深刻化しそうです。 向こう3年間が大きなヤマ場で、夜間の供給予備率が7~8%まで低下する可能性があり、供給予備率が10%を下回れば、停電発生の可能性が高まります
また、原子力発電を開始すると行っても、8年間続いた脱原子力発電政策で原子力発電産業の生態系が崩れ、専門人材が大量流出しまいました。今すぐに、政策見直しを決めたとしても、原子力発電再稼働までは5年近い時間がかかることを意味します。
台湾電力原子力発電事業部の人員は平成30年の2529人から令和6年4月の1871人へと26%減りました。残る技術者も高齢者が中心です。
研究人材を教育する国立清華大学の工程システム学部では原子力専攻者が1学年で10人ほどにすぎないそうです。彼らでさえも卒業後は原子力発電が注目を浴びる米国などに留学するということです。台湾政府は小型モジュール原子力発電(SMR)など未来の新技術に積極的に対応したいと言っていますが、どんな人材でやっていくのかというのかという批判があります。
TSMCは、台湾半導体産業が空洞化するのではないかという懸念があります。
TSMCがアメリカに工場を建設したり、熊本に工場を建設したりするのは、台湾の地政学的危険のほか、台湾半導体産業に必要な電力がまかなえないと判断した結果であるといわれています。