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雑記帳

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103万円の壁の突破額はいくらになるか

 政府・与党は、令和6年10月5日までに、国民民主党の主張に沿って「年収103万円の壁」を見直す方向で調整に入りました。
 国民民主党は、現在48万円となっている基礎控除を72万円引上げて120万円にして、現在の103万円の壁を175万円の壁まで引上げるという提案をしています。

 基礎控除を下げるということは所得税の減税を意味します。
 恩恵を受けないのは、所得税を納付していない人、あるいは、課税される金額(収入-必要経費-各種控除)が2500万円を超える人です。
 他は、大なり小なり恩恵を受けます。
 なお、基礎控除を75万円引上げたことによる減税効果は、年収210万円の人が約9万円(4.2%減)、年収500万円の人が約13万円(2.6%減)、基礎控除が48万円より少なくならない上限に近い年収2300万円の人だと約38万円(1.6%減)になります。しかし、金額から見ればともかく、パーセンテージから見ると高額所得者優遇ともいいきれないでしょう。

 減税というと、人気取りのばらまきかという人もいますが、必ずしもそうではありません。
 基礎控除と給与所得者控除の合計は、物価の上昇に連動して増額されてきたのですが、平成7年(1995年)から29年間増額されてきていません。なお、令和2年に、基礎控除が38万円から48万円になり、給与所得者控除の最低額が65万円から55万円になっていて、弁護士を含む自営業者は10万円上がっているのですが、給与所得者にとっては、103万円から増えていません。
 さほど収入のない人の場合、本来なら、最低賃金の増加に応じて基礎控除と給与所得者控除の合計が上がるべきところ、1円も上がっていないわけですから、29年もの間、ステルス増税をしていたということになります。
 遡って29年分まとめて納め過ぎた税金を返せというわけではなく、過去の分はもういいから、これからは正当な額にしてほしいということであり、必ずしも無理な要求ではないかと思います。

 国税と地方税ともに減額となり、合計7.8兆円と試算されていますが、これは、税収増になる点を、わざと上げずに議論しようとしている点で不十分です。
 このところのインフレとともに給与額が上がっていますし、所得税は累進課税なので、物価や賃金の伸びに加え、インフレで物価や賃金の伸びを上回るペースで所得税収が増す「ブラケットクリープ」現象もおきますから税収は増えます。また、消費税も、インフレで本体価格が上がっていますし、さらに、特に低所得者層にとっては、手取りが増えれば消費する額が増えるでしょうから、消費税も所得税も増えます。
 ここ何年かは、税金を取り過ぎて余っているという状態ですから、7.8兆円くらいはなんとかなりそうです。
 なお、一回の給付金なら、将来のことを考え貯めておこうと考えるかも知れませんが、恒久減税なら財布のひもが緩んで消費が増えるでしょう。好循環になるかと思います。
 景気が良くなれば、法人税も上がるでしょう。

 国税が上がれば地方税も上がります。住民税も消費税も法人税も上がります。
 財務省が総務省を通じて、知事会などの機会に、各地の首長にマイナスの点だけを言って、住民サービスが落ちると脅かさせるというのは姑息ですね。
 万一、地方の税収に不足があれば、地方交付税で補填すれば良いかと思います。

 労働力不足の解消にもなります。働き控えなどは社会的損失です。
 法人と異なり、個人は全員1月1日に始まり12月31日までの収入で計算しますから、働き控えは、年末になって集中することになり、職場にも同僚にも迷惑をかけることは最悪です。
 働く時間の制限は、従業員にとっても給与の減少となり、雇用者にとっても、売上減少につながりますからマイナスです。

 金額ですが、国民民主党の公約である178万円でいいのではないでしょうか。
 政府は、令和6年度補正予算案の一般会計からの支出を13.9兆円にする調整に入りました。令和5年度は13.1兆円です。
 インフレと賃上げなどで、国の歳入は、結構上ぶれしています。地方に回す交付税も、なんとかなりそうです。

 国民民主党は、令和6年11月28日に、法案を提出しました。
 もう1つの103万円の壁となっている、学生の子どもを持つ親への減税の仕組みである特定扶養控除も上限額を引上げる必要があり、その法案もセットです。

 自民党と公明党とすれば、国民民主党の賛成がなければ予算は成立しません。
 国民民主党は、安易な妥協をすると、令和7年6月の参院選での、従前議席の何倍もの議席拡大は望めなくなります。
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