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2024年バックナンバー

雑記帳

ショルツ独連邦首相、令和7年はじめに解散総選挙実施へ

 ドイツのショルツ連邦首相は、令和6年10月6日、リントナー財務相の解任をシュタインマイヤー大統領に要請したと発表しました。ドイツ大統領の権限は、形式的儀礼的なものですから、ショルツ連邦首相の要請を断る権限はありません。
 リントナー氏は、連立与党を担う自由民主党(FDP)を率いていて、事実上の政権崩壊となります。

 ショルツ政権は令和3年12月に発足しました。
 ショルツ氏が所属する中道左派の社会民主党(SPD)、環境政党の緑の党、自由民主党(FDP)の3党の連立からなっています。各党のシンボルカラーは、SPDが赤、緑の党が緑、自由民主党は黄色で、信号機連合(Ampelkoalition)とも呼ばれていました。

 FDPは財政規律を重んじ、規制などが少ない市場経済を推進する立場で、社会保障を重視するSPDや、環境規制に前向きな緑の党と意見が対立していました。
 政府の支持率が低下し、オポチュニスト政党(AfD)や振興左派政党(BSW)が勢力を増す中、連立政権内では財政政策や独経済の方向性を巡り数カ月にわたり対立が続いていました。
 政権発足時から分かっていたことですが、よく3年近く続きましたね。

 日本の場合、憲法69条に「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定めていますが、内閣不信任案の可決あるいは信任案の否決がなくとも、憲法7条により、いつでも衆議院の解散(解散は天皇が行います)ができます。

 ドイツは、連邦首相の一存で解散することは基本法(憲法)上できません。
 まず、不信任案が可決された場合ですが、内閣不信任案は、連邦議会の過半数の議員による新連邦首相後継者(ドイツ基本法67条)を選挙していないと提出できず、内閣不信任案が可決されると同時に、新連邦首相候補が新連邦首相となり、従前の連邦首相は失職しますから、従前の連邦首相が連邦議会を解散することは法的に不可能です。

 どのように解散するかといいますと、連邦首相が、自己に信任を表明すべき旨の連邦首相の動議を連邦議会に提出し、連邦議会議員の過半数の同意を得られなかったときは、連邦大統領は、連邦首相の申立てに基づいて、連邦議会を解散することができます(ドイツ基本法68条)。

 連邦議会の議席数は以下のとおりです。
 与党  416
  社会民主党 207
 同盟90/緑の党 117
 自由民主党 91
 野党  318
 キリスト教民主同盟  153
 キリスト教社会同盟  43
 ドイツのための選択肢(AfD) 77
 左翼党 28
 ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)10
 その他 7

 自由民主党の91議席が不信任に回りますから、連邦議会議員の過半数の同意を得られなかったとして、連邦大統領は、連邦首相の申立てに基づいて、連邦議会を解散することになります。
 SPDの惨敗はほぼ確実です。ショルツ連邦首相は、退陣です。
ドイツのための選択肢(AfD)とザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)の躍進も確実です。

 ショルツ連邦首相は、年内に信任投票をして、令和7年2月23日に連邦議会議員選挙をすると約束しています。
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