本文へ移動

2024年バックナンバー

雑記帳

イギリス最後の石炭火力発電所が運転停止 石炭火力すべて廃止

 イギリスで唯一稼働していた石炭火力発電所が、令和6年10月1日、運転を停止し、記念の式典が開かれました。

 令和6年4月29日、30日両日、イタリア・トリノで開催された先進7か国(G7)気候・エネルギー・環境相会合(G7環境相会合)は、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策のない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することなどで合意し、共同声明を発表しました。
 気候変動問題については、「21世紀末における、平均気温上昇を産業革命前比で1.5度に抑える」という目的達成のために、「G7として2030年までに世界の温室効果ガスを2019年比で43%、2035年までに60%削減するための努力を約束する」としています。

 石炭火力は、世界の発電量の36%を担う最大の電源です。
 世界第1位の電力消費国中国は61.8%、世界第3位の電力消費国インドは71.8%を石炭火力に依存しています(2022年)。
 ちなみに、世界第2位の電力消費国はアメリカ(うち石炭17%。2023年)です。
 また、中国とインドだけで世界の石炭火力の発電量の3分の2を占めています。

 火力発電に絞って1kW時あたりのCO2排出量を見ると、最も多くのCO2を排出するのが従来型の石炭火力発電で0.867kg、石油火力発電は0.721kg約0.14kg少なく、さらに従来型のLNG火力発電は、石炭火力発電の半分以下となる0.415kgです。
 ですから、にらまれるのですね。

 G7加盟国のうち、アメリカとカナダ米加は北米産の天然ガス、欧州諸国のうちドイツを除く各国も天然ガスに移行しています。
 ただ、米国では生成人工知能(AI)による電力需要増を反映し、石炭火力の閉鎖が急速にスピードダウンしています。

 G7の中で、日本とドイツとは、G7の目標に沿い、石炭火力の発電を2035年までに早期に廃止できるのでしょうか。

 日本の電源構成は、火力発電への依存度が高く現在発電量の約7割を占め、石炭火力による発電は約3割あります。
 日本に、今もそんなに石炭があるのか、とお思いの方は鋭いです。
 日本は、オイルショック以降の1980年代から価格競争力のあるオーストラリアからの輸入炭を主に利用する火力発電所を、北海道から沖縄までの沿岸に建設し、電気料金の低廉化と安定供給に努めた結果、石炭火力による発電は約3割もあるのです。
 なお、現行エネルギー基本計画では、2030年度時点でも約2割を見込んでいます。
 常識的に考えて、石炭火力発電を2035年までに廃止するということは難しそうですね。
 原子力発電所による発電を増大させることにより、目標達成は可能でしょうか。無理なような気がします。

 ドイツは、国内に豊富にある褐炭(品質の劣る石炭)の利用があり、依然発電量の25%以上を石炭火力に依存しています。
 ドイツは、2038年までに石炭火力発電の廃止を法で定めています。さらに2030年への前倒しをドイツの連立政権は目指しています。
 といっても、ロシアからの天然ガスはあてにできなくなってしまいました。
 ドイツでは右派ピュリスト政党(AfD)だけでなく左派ポピュリスト政党(BSW)も脱石炭に反対していますが、最近の旧東独地域の州議会選挙で共に支持を伸ばしました。
 ドイツが、石炭火力発電の廃止に至らなければ、日本だけが仲間はずれになるということは避けられますが、どうなるでしょう。
TOPへ戻る