2024年バックナンバー
雑記帳
フォルクスワーゲンを「国内工場閉鎖」に追込んだ理由
令和6年9月2日、フォルクスワーゲン(VW)の財務担当の役員は、国内の工場を閉鎖する可能性について言及しました。なお、アウディやポルシェも、VWのグループ企業です。
また、VWは、令和6年9月10日、ドイツ国内6カ所の工場令和11年まで雇用を保障することなどを盛り込んだ一連の労働協約を破棄すると発表しました。
しかし、ニュース等によれば、VWの経済状態は、すでに10年も前から非常に悪かったということです。
それにもかかわらず、雇用を増やし続け、従業員には雇用保証まで与え、その結果、このままでは令和8年までに50億ユーロ(8000億円)が不足するという事態に陥りました。
ただ、ドイツ国民は、VWは優良企業というイメージを持ち続けていたので、これらのニュースに衝撃を受けました。
VWのディーゼル・スキャンダルが起こったのが、平成27年9月のことです。
米環境保護局(EPA)の調査により、日本製ポータブル測定器による計測の結果、VWの一部の車が、コンピュータソフトなどに不正をして、排出ガス規制を逃れているということが発覚し、VWが売りにしていた「クリーン・ディーゼル」が嘘であることがわかってしまいました。
VWのハイブリッド技術は、トヨタのハイブリッドより劣っています。
平成30年、VWは、同社の製品を全面的に電気自動車にシフトすると宣言しました。
こうして、VWは、100年以上かけて作り上げたガソリン車と、CO2削減のために開発したディーゼル車という2つ技術を捨去ることを決めたということになります。
VW社が、全面的に電気自動車にシフトしようとした背景には、政府の「何が何でも電気自動車」という政治的な圧力が強く働いていたとされています。
そのため、一時は他のメーカーも一斉に電気自動車シフトに舵を切りましたが、ベンツは、その方針をいち早く修正しています。BMWは、最初から、テクノロジーの選択肢を一本に絞ることはできないとして、電気自動車を開発しつつ、ガソリン車も温存するという方針を取りました。
そんな中、VWだけが、電気自動車に一点張りをしたうえ、柔軟に方針を変更しようとはしませんでした。
ドイツの大企業は、どの党とどの党が政権を握ってる場相手でも、政府との結びつきが非常に強いとされています。
さらに、VWについては、VWの株式は、20%以上をニーダーザクセン州が所有していて、ニーダーザクセン州営企業的なカラーも濃いといえます。大株主であるニーダーザクセン州は、経営に口を出したり、拒否権を行使したりすることができました。
ドイツの自動車産業が、いつの間にか斜陽になってしまった背景には、EUが押し進めていたGX(=グリーン・トランスフォーメーション)があります。
これは、石油、石炭といった化石燃料から、太陽や風といった再生可能エネルギーへの転換を目標とするもので、EU内の環境派議員が強引に展開したものです。
ドイツは、メルケル首相時代、メルケル首相率いる保守のCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)が、議席数が足りているときは中道のFDP(自由民主党)と連立を組み、議席数が足りない場合は、SPD(社会民主党)と大連立を組みながら政権を維持していました。
ドイツ政府は、メルケル首相時代に、GXを重視し、他のEU国よりも5年早く、2045年に脱炭素という、どこよりも大きな目標を掲げていました。
さらに、令和3年12月に、メルケル政治を引き継いだショルツ首相率いるSPDが連立相手としたのは、緑の党とFDPでした。
環境原理主義ともいえる緑の党が政権に加わり、さらにSPD左派が加わり、脱炭素の圧力はさらに強まりました。ドイツの緑の党と社民党内の左派勢力にとって、化石燃料の撲滅、およびガソリン自動車の消滅は積年の夢だったといえます。
エネルギー危機にもかかわらず、極端な脱原発を断行したのも、緑の党の意見によるものでした。それ以来、電気自動車普及のための前提である電気は、ドイツでは恒常的に不足、かつ、高騰したままです。
電気自動車が、エンジン(内燃機関)で走る自動車(ガソリン、ディーゼル)と対等に勝負できる自動車なら問題はありませんでした。
電気自動車には、現時点において、車両価格が高い、航続可能距離が短い、重量が重い、充電に時間がかかる、充電設備が必要である、リセールバリュー(中古車買取価格)が安いなどのデメリットがあります。また、寒冷地の場合は、電池の持ちが悪く航続距離が短くなってしまいます。
エンジン(内燃機関)で走る自動車は、特許や自動車会社の長年にわたる技術の蓄積があるでしょう。
しかし、世界で売れる品質を有するガソリン車を製造できない中国も、電気自動車なら安価に製造できます。大量に生産すれば、品質も向上するでしょう。
VWは価格の安い中国車との競争に苦しむことになります。
ただ、VWは本当にそれほど業績が悪いのか懐疑的に見る人もいます。
ガソリン車の売行きが良く、VWの営業利益は伸びているそうです。また、ドイツで計画していた電気自動車の製造は中止しましたが、中国の安徽省にある工場の拡張には25億ユーロを投じるという予定に変更はありません。
つまりVWは他の多くの大企業と同じく、ドイツに見切りをつけただけのことのようにみえます。
高い電気で高額商品を作っても、国際競争では勝てません。
しかも、今のドイツには、将来、電気が安定に供給される保証さえありません。
今のうちに、もっと希望のあるところに生産工程を移すということで、当然の決定かもしれません。
仮に、そうだとすれば、VWを追い出したのは、現政権の無謀なエネルギー政策ということになります。
ただ、来年の総選挙で、現政権が崩壊する可能性は高いですが、それまでは待っていられないでしょうね。
また、VWは、令和6年9月10日、ドイツ国内6カ所の工場令和11年まで雇用を保障することなどを盛り込んだ一連の労働協約を破棄すると発表しました。
しかし、ニュース等によれば、VWの経済状態は、すでに10年も前から非常に悪かったということです。
それにもかかわらず、雇用を増やし続け、従業員には雇用保証まで与え、その結果、このままでは令和8年までに50億ユーロ(8000億円)が不足するという事態に陥りました。
ただ、ドイツ国民は、VWは優良企業というイメージを持ち続けていたので、これらのニュースに衝撃を受けました。
VWのディーゼル・スキャンダルが起こったのが、平成27年9月のことです。
米環境保護局(EPA)の調査により、日本製ポータブル測定器による計測の結果、VWの一部の車が、コンピュータソフトなどに不正をして、排出ガス規制を逃れているということが発覚し、VWが売りにしていた「クリーン・ディーゼル」が嘘であることがわかってしまいました。
VWのハイブリッド技術は、トヨタのハイブリッドより劣っています。
平成30年、VWは、同社の製品を全面的に電気自動車にシフトすると宣言しました。
こうして、VWは、100年以上かけて作り上げたガソリン車と、CO2削減のために開発したディーゼル車という2つ技術を捨去ることを決めたということになります。
VW社が、全面的に電気自動車にシフトしようとした背景には、政府の「何が何でも電気自動車」という政治的な圧力が強く働いていたとされています。
そのため、一時は他のメーカーも一斉に電気自動車シフトに舵を切りましたが、ベンツは、その方針をいち早く修正しています。BMWは、最初から、テクノロジーの選択肢を一本に絞ることはできないとして、電気自動車を開発しつつ、ガソリン車も温存するという方針を取りました。
そんな中、VWだけが、電気自動車に一点張りをしたうえ、柔軟に方針を変更しようとはしませんでした。
ドイツの大企業は、どの党とどの党が政権を握ってる場相手でも、政府との結びつきが非常に強いとされています。
さらに、VWについては、VWの株式は、20%以上をニーダーザクセン州が所有していて、ニーダーザクセン州営企業的なカラーも濃いといえます。大株主であるニーダーザクセン州は、経営に口を出したり、拒否権を行使したりすることができました。
ドイツの自動車産業が、いつの間にか斜陽になってしまった背景には、EUが押し進めていたGX(=グリーン・トランスフォーメーション)があります。
これは、石油、石炭といった化石燃料から、太陽や風といった再生可能エネルギーへの転換を目標とするもので、EU内の環境派議員が強引に展開したものです。
ドイツは、メルケル首相時代、メルケル首相率いる保守のCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)が、議席数が足りているときは中道のFDP(自由民主党)と連立を組み、議席数が足りない場合は、SPD(社会民主党)と大連立を組みながら政権を維持していました。
ドイツ政府は、メルケル首相時代に、GXを重視し、他のEU国よりも5年早く、2045年に脱炭素という、どこよりも大きな目標を掲げていました。
さらに、令和3年12月に、メルケル政治を引き継いだショルツ首相率いるSPDが連立相手としたのは、緑の党とFDPでした。
環境原理主義ともいえる緑の党が政権に加わり、さらにSPD左派が加わり、脱炭素の圧力はさらに強まりました。ドイツの緑の党と社民党内の左派勢力にとって、化石燃料の撲滅、およびガソリン自動車の消滅は積年の夢だったといえます。
エネルギー危機にもかかわらず、極端な脱原発を断行したのも、緑の党の意見によるものでした。それ以来、電気自動車普及のための前提である電気は、ドイツでは恒常的に不足、かつ、高騰したままです。
電気自動車が、エンジン(内燃機関)で走る自動車(ガソリン、ディーゼル)と対等に勝負できる自動車なら問題はありませんでした。
電気自動車には、現時点において、車両価格が高い、航続可能距離が短い、重量が重い、充電に時間がかかる、充電設備が必要である、リセールバリュー(中古車買取価格)が安いなどのデメリットがあります。また、寒冷地の場合は、電池の持ちが悪く航続距離が短くなってしまいます。
エンジン(内燃機関)で走る自動車は、特許や自動車会社の長年にわたる技術の蓄積があるでしょう。
しかし、世界で売れる品質を有するガソリン車を製造できない中国も、電気自動車なら安価に製造できます。大量に生産すれば、品質も向上するでしょう。
VWは価格の安い中国車との競争に苦しむことになります。
ただ、VWは本当にそれほど業績が悪いのか懐疑的に見る人もいます。
ガソリン車の売行きが良く、VWの営業利益は伸びているそうです。また、ドイツで計画していた電気自動車の製造は中止しましたが、中国の安徽省にある工場の拡張には25億ユーロを投じるという予定に変更はありません。
つまりVWは他の多くの大企業と同じく、ドイツに見切りをつけただけのことのようにみえます。
高い電気で高額商品を作っても、国際競争では勝てません。
しかも、今のドイツには、将来、電気が安定に供給される保証さえありません。
今のうちに、もっと希望のあるところに生産工程を移すということで、当然の決定かもしれません。
仮に、そうだとすれば、VWを追い出したのは、現政権の無謀なエネルギー政策ということになります。
ただ、来年の総選挙で、現政権が崩壊する可能性は高いですが、それまでは待っていられないでしょうね。