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2024年バックナンバー

雑記帳

旧耐震基準と新耐震基準の違い

 令和6年1月1日、能登半島を中心に大規模な地震が発生、広範囲にわたり大きな被害をもたらしました。
 犠牲となった皆さんの、ご冥福をお祈りしますとともに、一刻も早い復旧を祈念しております。

 能登地方の地震に限らず、地震によって命を落とす方の多くが、建物の倒壊によるものだということが分かっています。そのため、地震大国である日本には、建築物に対して地震に耐えうるかどうかをチェックする基準「耐震基準」が制定されています。

 耐震基準はこれまでに何度か改正されていますが、最も大きな改正となったのが昭和56年(1981年)6月1日の改正です。これまでの基準を大きく変えるものだったので、この時を境に「旧耐震基準」「新耐震基準」と呼ばれるようになりました。

 新耐震基準は、宮城県沖地震をきっかけに制定されました。
 昭和53年に宮城県沖地震がおきました。
 この地震は、マグニチュード7.4、最大震度を観測した仙台市では震度5を記録しました。
 建物の被害は全壊が1183棟、半壊が5574棟、一部損壊が6万124棟でした。
 人的被害では死者が28人、負傷者が1325人で、主に塀やブロック塀の破損・倒壊によるものです。
 仮に、震度6以上の地震だった場合、建築物や住宅の倒壊はさらに広がり、多くの人命も失われていた可能性があります。
 そのため、震度6~7程度の地震でも倒壊しないような耐震性能が求められるようになり、昭和56年(1981年)の建築基準法改正で「新耐震基準」が設けられました。

 「旧耐震基準」は昭和56年(1981年)5月31日まで建物に適用されていた基準です。
 旧耐震基準は、主に震度5程度の中規模の地震において、建物が大きな損傷を受けないことを考えて定められています。

 なお、厳密にいえば、昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請を受けた建物が「新基準」で、それ以前に建築確認申請を受けた建物が旧基準です。
 微妙な時期に建築された建物購入の時は、気をつけることは当然ですが、賃借する場合も同様です。

 なお、平成12年6月以降の建物は「現耐震基準」といい、木造の建物に対して法改正されたものが適用されています。
 主な改正内容は壁と柱についての2点です。壁については、壁の量に加え配置のバランスも考慮されるようになりました。柱については、土台や梁に金物を使って留めることで、地震時に柱が引き抜かれないよう考慮されるようになりました。

 熊本地震の被害状況を例にして、旧耐震基準と新耐震基準を比べてみましょう。
 熊本地震では、旧耐震基準の建物の被害は、倒壊・崩壊が28.2%、大破が17.5%でした。
 それに対して、新耐震基準の建物の被害は、倒壊・崩壊が8.7%、大破が9.7%でした。
 旧耐震基準と新耐震基準の建物を比べると、被害状況において大きな差があり、新耐震基準の建物がいかに地震に耐えられるかが分かります。

 なお、令和6年に発生した石川県能登半島の地震では、多くの住宅が被害に遭いました。
 中でも木造住宅の被害が大きかった、石川県珠洲市で行われた調査によると、調査対象となった木造住うち、旧基準の3割が全壊あるいは半壊したのに対し、新耐震基準導入後に新築された建物の1割未満が全壊あるいは半壊にすぎませんでした。

 能登半島の地震では、珠洲市の最大震度は6強程度だったと推定されています。
 新耐震基準は「震度6強以上の揺れでも倒壊しないレベル」とされていますが、それでも全壊してしまった住宅があったということです。
 珠洲市周辺では、3年前から震度6弱~6強の強い地震が続いており、震度1以上の揺れに関しては500回以上も発生していました。
 調査を行った金沢大学によりますと、連続的に地震が発生したことにより、建物の強度が下がっていたのではないかと指摘しています。
 新耐震基準を満たしていたとしても、度重なる揺れによって、建物に亀裂やヒビが入ることで強度が下がることも十分に考えられます。
 とはいえ、新耐震基準の建物はすぐには倒壊せず、十分な避難時間を確保するように設計されています。地震が何度も起きている地域においては、事前に避難行動を計画し、災害時にすぐ行動できるようにしておくことが大切です。
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