2024年バックナンバー
雑記帳
円安は日本にプラス、パニックの理由にならない ノーベル賞学者ポール・クルーグマン氏
ニューヨーク市立大学の経済学教授でノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン博士は、令和6年6月2日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、日本経済にとって需要押し上げにつながる円安に対し、日本の通貨当局がパニックとなっているのは理解し難いと語りました。
具体的には「日本がなぜ円安をこれほど懸念しているのか当惑させられると言わざるを得ない」と指摘したうえ、「円安は多少の時差を伴って日本の物品・サービス需要に実際には前向きとなる」とし、「なぜこれほど多くのパニックを引き起こしているように見受けられるのか不可解だ」と話しました。
クルーグマン氏はまた、日本がようやく持続的なインフレ圧力を実現したか納得していないとも発言し、「そのように望むが、日本のデータを見ても納得できない」と語りました。
「根本的な種類の力強さはまだ見られない。日本の長期的な弱さは人口動態、極めて低い出生率に関係している。日本は少なくとも以前よりは移民にオープンになったが、この点に変化はない。道のりは遠い」との見解を表明しました。
円安の最大の要因は日米金利差です。
根強いインフレを背景に、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局が近いうちに利下げするとの予想はほとんどないものの、クルーグマン氏は米利下げでもインフレ再加速の可能性は非常に小さいと見受けられるとして、早期に金利を引き下げた方がよいとの考えを改めて示しました。
もちろん、ノーベル賞学者が述べたから、すべて正しいということはありません。
ただ、海外にも、円安は日本にプラスであると述べる学者がいるということに留意しても損はありません。
なお、アメリカのトランプ前大統領・次期大統領候補は、令和6年4月23日、円安・ドル高が進む為替市場について「ドルは円に対して34年ぶりの高値をつけた。アメリカにとって大惨事だ」「愚かな人々には聞こえがいいが、製造業などには大惨事だ。彼らは多くの仕事を失うか、『賢い』国々に工場を建設するか、どちらかの対応を余儀なくされるだろう」とSNSに投稿しています。
また、オ・ジョングン・韓国金融ICT融合学会長は、令和6年5月17日、韓国中央日報に「スーパー円安現象は韓国経済にも大きな負担だ。円安で日本商品のドル建て価格が低下し、海外市場で競合する韓国商品が価格競争で劣勢になる。韓国輸出品のグローバル競争力が高まったというが、まだ鉄鋼や石油化学、自動車・部品、船舶、機械類など日本の輸出品とグローバル市場で競争する製品が多い。」「韓国経済研究院によると、2020年基準で韓国と日本の輸出競合度は69.2と、米国(68.5)、ドイツ(60.3)、中国(56.0)など主要国のうち最も高い。」「ドルに対して日本円が1%ポイント値下がりすれば、韓国の輸出価格は0.41%ポイント、輸出物量は0.20%ポイント下落する」韓国中央日報に寄稿しています。
韓国は、日本との輸出競争を考えれば、ウォン安の方が好ましいのですが、政策金利が3.5%であるにもかかわらず、1ドル1375ウォンと危険水域のウォン安になっていて、1400円をこえるウォン安になると、韓国から資本が逃げ出し、再び、IMFの支配下におかれかねないとして、ウォンが高くなるように、虎の子のドルを使って、また、国民年金のドルを借りてまで、必死でウォン安にならないよう為替介入を繰り返しています。
資本逃避の心配がない日本が、円安容認をし、韓国の輸出シェアを奪っている日本(円が1%対ドルで安くなると、韓国の輸出価格を0.41%安くせざるを得ない)に、強い不安を示しています。
また、中国も、資本逃避が怖くて、ドルを売って元高になるように、必死で介入しています。
やはり、資本逃避が起こりえない日本が、円安容認して、中国の輸出が日本に脅かされていることには不満をもっています。
通貨安は、近隣窮乏策です。
中国や韓国の輸出産業のうち、日本と競合する分野について、壊滅といわないまでも、不利な立場に追い込み、日本に、様々な点において、妥協せざるを得なくするためにも、円安は、日本の国益にかなうかと思います。
現実に、令和6年5月27日の、日中韓首脳会議においても、中国や韓国は日本にすり寄ってきています。