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雑記帳

懲役と禁錮を一元化へ「拘禁刑」創設

 法務省は、懲役と禁錮の両刑を一元化して「拘禁刑」を創設するため、刑法などを改正する関連法案を来年の通常国会に提出する方針を固めました。

 刑法は、明治40年(1907年)に制定されました。

 民法ほど、大改正がないということはありませんでしたが、刑の種類(死刑、懲役、禁固、罰金、科料)には変化がありませんでした。

 奪われるものの種類により、生命刑(死刑)、自由刑(懲役、禁固)、財産刑(罰金、科料)に分かれます。
 日本の刑法には、名誉刑、つまり、名誉に関わる権利や社会的地位を奪うという刑の定めはありません。名誉刑の定められている国もあります。

 懲役と禁固の違いは、拘束された受刑者が、労働の義務のある懲役と、労働の義務がない禁固にわかれます。
 原則は、懲役ですが、いわゆる破廉恥罪ではない、業務上過失致死傷(現在は、自動車運転は特別法により規律されています)や、内乱罪などには禁固刑もあります。

 禁固といえば、業務上過失致死傷、自動車過失致死傷が圧倒的に多く、そのうちでも自動車過失致死傷が多いですね。

 ただ、懲役と禁固の区別に意味がなくなってきています。

 労働が義務づけられていない禁錮で入所する受刑者も「何もせずに過ごすのはかえって苦痛だ」といった理由から、約8割は自ら希望して作業をしているというのが現状です。
 令和3年12月24日に公表された今年の犯罪白書によりますと、令和2年入所した受刑者の99.7%(1万6562人)が懲役だったのに対し、禁錮は0.3%(53人)と少ないこともあり、禁錮を刑罰として維持する必要性は薄れています。

 また、懲役刑は労働が伴うといっても、近年は高齢の受刑者が多くなり、現実に労務に耐えられるかどうかわからない受刑者が多くなり、作業時間の確保に縛られ、再犯防止に向けた教育プログラムや指導を受ける時間が限られてしまうとの課題も指摘されるようになっています。

 その昔は、刑務所で、本当に必要な物が作られたりしていたのですが、機械の進歩で、受刑者に操作ができるのかという問題もあり、必要な物を作るというよりは、規則正しい労働習慣をつけるということに重点が置かれています。

 こうした現状を踏まえ、法制審議会は、令和2年10月、3年余りの議論を経て、新たな刑を創設する要綱を決定し、法務大臣に答申し、法務省で法案化の準備を進めていました。

 拘禁刑の創設に伴い、懲役・禁錮の規定が明記されている全ての法律も改正される見通しです。
 自治体の条例も変更する必要が生じるため、施行には成立後3~5年程度の準備期間が設けられるとみられます。
 法務省は、拘禁刑を科された受刑者を更生させるため、実際にどのような処遇を行うかの検討も進めることになります。


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