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雑記帳

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南シナ海問題を巡る常設仲裁裁判所の判決

 平成28年7月12日、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、マレーシアなどが領有権を争う南シナ海問題を巡り、オランダ・ハーグにある常設仲裁裁判所は、中国が権利を主張する独自の境界線「9段線」が国際法上の根拠がないとする判決を出しました。 
 
 もう4年前ですね。
 
 南シナ海問題を巡る初の司法判断でした。
 
  中国が進める人工島造成などの正当性は、これで国際法上は認められなくなりました。
 
 といっても、中国はいうことを聞くつもりはありませんから、ただの「紙切れ」です。
 
(争点1)
 中国が南シナ海のほぼ全域を囲い込むように一方的に設定した「九段線」に「歴史的な権利」が認められるか
 
 国連海洋法条約(UNCLOS)は排他的経済水域(EEZ)における限定的な漁業権だけを沿岸国以外にも認めている。中国が主張する海洋権益に対する「歴史的な権利」は条約発効時に消滅している。他の国々と同じように中国の船舶や漁師は南シナ海の島々を使用していた歴史はある。しかし、こうした歴史は島々に主権が存在するかを決める正当性の根拠にはならない。 
  条約発効前も領海の外の海域は法的には公海の一部であり、どの国も自由に航海と漁獲ができた。当裁判所は、中国が主張する南シナ海での歴史的な航海と漁業は「歴史的な権利」というよりは、むしろ公海での自由を行使していたと結論付ける。中国が歴史的に南シナ海の海域を排他的に支配し、他の国が海洋権益を利用するのを防いでいたとする証拠はない。 
  中国が「九段線」で囲まれた南シナ海の海域で、条約により認められた権利を超えて海洋権益に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はない。 
 
(争点2)
 中国が南シナ海で埋め立てた人工島は条約で言う「島」に当たり、排他的な海洋権益を主張できるか
 
 当裁判所は水界地理学者を指名して調査した。フィリピン沖のスカボロー礁や、スプラトリー諸島のジョンソン南礁、クアテロン礁、ファイアリークロス礁はEEZや大陸棚を有しない「岩」であるというフィリピンの主張に同意する。
  ミスチーフ礁とスビ礁、ヒューズ礁、セカンド・トーマス礁は、一切の海洋権益が認められない「低潮高地」である。しかしガベン礁やマッケナン礁はフィリピンの主張とは異なり、「岩」と認められる。
  人間の居住、独自の経済生活を維持できないものは「島」ではなく「岩」であり、EEZも大陸棚も主張できない。スプラトリー諸島は歴史的に中国や他の国々の小集団によって利用されてきた。漁師による一時的な利用は持続可能なコミュニティーや歴史的な経済活動とは言えない。
  当裁判所は、太平島、パグアサ島、ウェストヨーク島、チュオンサ島、ノースイースト島、サウスウエスト島を含むスプラトリー諸島の高潮時にも海面上に出ているものはすべて法的には「岩」であり、EEZも大陸棚も有していないと判断する。 
 
(争点3)
 南シナ海のミスチーフ礁などの周辺での中国の活動はフィリピンの主権的権利を侵害しているか
 
 ミスチーフ礁やセカンド・トーマス礁、リード堆は「低潮高地」で、フィリピンのEEZと大陸棚の海域にある。中国は何の権利も主張できず、フィリピンにEEZに関して主権的権利が認められる。 
  当裁判所は中国が(1)リード堆で石油を調査するフィリピンの活動を妨害(2)フィリピンのEEZ内で同国の漁業禁止を主張(3)ミスチーフ礁やセカンド・トーマス礁のフィリピンのEEZ内で中国の漁業を止めるのに失敗(4)フィリピンの許可なくミスチーフ礁で人工島を造成したと認定する。中国はEEZや大陸棚に関してフィリピンの主権的権利を侵害した。 
  スカボロー礁については、中国や他の国々が長らく漁業を行っており、伝統的な漁業権を有している。当裁判所はスカボロー礁の主権について判断していないが、中国は2012年5月からフィリピンがスカボロー礁にアクセスするのを妨害しており、フィリピンの漁師たちが有する伝統的な漁業権を尊重する義務に違反している。伝統的な漁業権は中国にも認められる。 
  中国は、スプラトリー諸島で7つの人工島を造成したことで珊瑚礁の環境をひどく痛め、海洋環境の保護を求める条約の義務を破っている。 
  また中国の公船は2012年4~5月、スカボロー礁で、フィリピンの船舶に繰り返しハイスピードで接近、近距離でその前を横切ろうとしてフィリピンの船舶と乗組員を危険に陥れた。よって当裁判所は中国が船舶の衝突防止義務に違反したと判断する。 
 
(争点4)
中国は係争中の領有権争いを悪化させたか
 
 中国は(1)フィリピンのEEZ内にある「低潮高地」のミスチーフ礁で巨大な人工島を造成(2)珊瑚礁のエコシステムを永久に、修復不能なまでに破壊(3)もともと自然な状態がどうだったかという証拠を永久に破壊した。中国は係争中にもかかわらず、当事者間の争いの悪化と拡大の防止に務める義務に違反した。 

 当時の岸田文雄外務大臣は、平成28年7月12日、中国が南シナ海での主権の根拠とする境界線「九段線」をオランダ・ハーグの仲裁裁判所が容認しない判断を示したことについて「判断は紛争当事国を法的に拘束する。当事国は判断に従う必要がある」との談話を発表しました。
 
 アーネスト・アメリカ大統領報道官は「判断を挑発行為に関与する機会として用いないよう、すべての当事者に求める」と呼びかけました。
  またこれに先立ち、国務省のカービー報道官は「南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するもの」とした上で、「アメリカ国はすべての当事者がそれぞれの責務を順守するよう希望する」と述べました。
 
 現状は、だんだん悪化しているようです。
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