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離婚

実子でない場合と親子関係不存在

 日本では、特別養子制度が導入されています。
 
 その制度を利用すれば、自分たち夫婦は子宝に恵まれていなくても、養子を育てることができます。

 ただ、現実には、子どものいない夫婦が、他人の子どもを自分たちの実子として届けることもありますし、未成年の娘が産んだ子を、親夫婦の実子として提出することもあります。

 前者の場合は、ほぼ間違いなく実子として育てます。そのために他人を自分たちの実子として届けているわけですから。
 
 後者の場合は、娘の結婚に差し障りがあるからといって、実子として育てる場合もあるでしょうし、そうでない場合もあるでしょう。

 他人の子どもを育てるという場合として、産院での赤ん坊の取違えという場合もあります。

 父親が死亡しました。
 
 生物学的血縁はないのに、子として育てられたまま、親が死亡したとします。
 
 きょうだいは、親の本当の子ではないということを知っているという場合があります。
 
 DNA鑑定をしないまでも、OO型とO型の両親からは、A型、B型、AB型の子は生まれません。他のきょうだいはO型なのに、1人だけA型ということになれば、親子関係はないことになります。
 
 また、顔かたちが、両親と全く似ていないという場合があるかも知れません。

 きょうだいとしては、親と生物学的血縁はない「きょうだい」が、親の子でないと主張して勝訴すれば、自分の取分が増えます。
 
 ですから、死んだ親と、生物学的血縁はない「きょうだい」との親子関係不存在の調停をし、訴訟を提起して勝訴すれば、取分が増えるという企みです。

 そこまでするかという考えもあるでしょう。
 
 また、弁護士が、そんな人の代理人になるかという問題もあります。
 
 ただ、現実に判例があります。

 平成22年9月6日東京高等裁判所の判決です。

 事案は「産院での取り違えによって、育ての親の長男として戸籍に記載され、46年から54年にわたり実の親子と同様の生活実体を形成してきたにもかかわらず、両親の死後、その遺産争いを契機として、戸籍上の弟らが提起した親子関係不存在確認請求を認容した原判決に対する控訴審において、育ての親との間で長期間にわたり実の親子と同様の生活の実体があったこと、育ての親はいずれも既に死亡しており、養子縁組をすることがもはや不可能であること、親子関係の不存在が確認された場合、長男が受ける精神的苦痛及び経済的不利益、戸籍上の弟らが親子関係不存在確認請求をするに至った経緯及び動機、目的、親子関係不存在が確認されない場合に、戸籍上の弟ら以外に不利益を受ける者がいないことなどを考慮すると、本件親子関係不存在確認請求は権利の濫用に当たり許されない」として、親子関係不存在確認請求が棄却され、最高裁判所も上告を棄却し、上告受理申立棄却で確定しています。

 この判決は、平成18年7月7日付最高裁判決を基礎としています。
 
 平成18年7月7日付最高裁判決は、自然血縁上の親子関係が存在していない者であっても、一定の条件のもとに、自然血縁関係上の親子関係がある者から提起された実親子関係の不存在確認の訴えが権利の濫用に該当する場合があるという見解を示しました。
 
 その場合に考慮すべき要件として、以下の判示をしています。
 
1 実の親子と同様の生活実態があったのか否か、あったとすれば、その長さ
2 実親子関係の不存在を確定することにより、形式上は実子であるが生物学的な親子関係のない子(以下「形式上の実子」)及びその関係者が被る不利益
3 改めて、「形式上の実子」について、養子縁組の届出をすることによって、その者が嫡出子としての身分を取得できる可能性の有無
4 血縁関係のある実子が、かかる訴訟を提起した経緯及び請求をする動機と目的
5 親子関係の不存在が確定されないとした場合に、訴訟を提起した血縁関係のある実子以外に著しい不利益を被る者の有無など諸般の事情
 
 最高裁判所の基準からして、他人の子を実子として届けている場合、産院での取違え、妻の不倫による子、いずれも同様と考えられます。
 
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