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離婚

家事調停委員と日本国籍

 韓国籍の弁護士が、離婚などの仲裁を行う調停委員の候補者として大阪弁護士会から大阪家庭裁判所に 推薦されましたが、大阪家庭裁判所から「当該候補者については、選考の結果、最高裁判所に任命上申しない旨決定した」との通知をしました。

 理由は、「調停委員は、公権力の行使にたずさわる公務員に該当するので、日本国籍を必要とする」ということでした。


 「外国籍会員の家事調停委員任命上申拒絶に関する会長声明」にて、大阪弁護士会は裁判所が国籍を理由に委員に任命しなかったのは不当だとして、 抗議の意見書を裁判所に送りました。


 その昔は、日本国籍がなければ、司法修習生にもなれませんでした。
 司法試験に合格して、司法修習生になることを希望した外国国籍の人の帰化を無条件に認めていましたから、司法試験に合格しても、司法修習生になれないということはありませんでした。
 最高裁判所は平成20年11月から修習を始める司法修習生の選考要項から日本国籍を必要とする「国籍条項」を削除しました。
 最高裁判所は、昭和52年4月から、外国国籍の司法試験合格者に「特例」の形で修習を認めてきましたが、条項自体を削除したことになります。


 公の権力を行使する公務員は日本国籍が必要です。
 国会議員、大臣(総理大臣は必ず国会議員)、裁判官などは、日本国籍がなければなれないことは当然ですね。


 そうすると、家事調停委員は「公の権力を行使する公務員」に該当するかどうかが問題となります。

 「調停制度は、市民の間の民事又は家事の紛争を、当事者の話し合いに基づき解決する制度であり」「調停委員の役割は、このような当事者の互譲による解決を支援する」というのは本当なのでしょうか。

 家事調停法には以下の規定があります。
「23条
 1項 婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件の調停委員会の調停にいて、当事者間に合意が成立し無効又は取消しの原因の有無について争いがない場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消しに関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
 2項 前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消し、認知、認知の無効若しくは取消し、民法第773条の規定により父を定めること、嫡出否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停について準用する。
 24条
 1項 家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衝平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる。この審判においては、金銭の支払その他財産上の給付を命ずることができる。
 2項 前項の規定は、第9条第1項乙類に規定する審判事件の調停については、これを適用しない。」

 家事審判官が、当該調停委員会を組織する家事調停委員の反対を振切ってまで「合意に相当する審判」をするとは考えにくいように思います。


 むしろ、家事調停委員が「当事者の面子などの問題で調停成立は無理だが、異議は述べずに確定する見込み」と述べたとき、家事審判官が「合意に相当する審判」をするというのが実情でしょう。
 家事調停委員は「公の権力を行使する公務員」に該当するのではないでしょうか。

 実質的に考えても、同じ時間に、担当裁判官1人あたり、家事調停が何件も同時進行していて、家事審判官は調停成立のときだけ顔を見せるという現況では「当事者の互譲による解決を支援する」だけとは考えにくいように思います。


 私は、家事調停委員に、外国籍の弁護士を任命することには反対です。
西野法律事務所
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