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トリビア バックナンバー 2/2

自然淘汰

弁護士増員論者の中には、弁護士を増やして競争させ、競争に負けたものが脱退(廃業)していく、つまり、淘汰されていくので問題がないという論陣をはられる方もおられます。

 弁護士の仕事を、ラーメン屋かタクシー運転手と同じように考えているのかも知れません。

 ます、ラーメン屋なら、1度入って「まずければ」二度と行かず、「おいしければ」常連となり、おいしいラーメンをつくるラーメン屋は繁盛し、まずいラーメンしかつくれないラーメン屋は店を閉めるということになるでしょう。

 ラーメン屋は、1度「まずい」店に入っても一杯数百円の損だけです。一度や二度「はずれ」を引いたからといって、消費者にとって大きな問題はありません。
また、「おいしい」ラーメンか、「まずい」ラーメンかは、好みの違いはあっても、基本的に誰にもわかります。

 タクシーはどうでしょう。
 腕の悪いタクシー運転手は、腕の悪い医師と同様あなたの生命を奪うかも知れません。
 もっとも、タクシー運転手は、事故を起こすと自分自身の命も危ないので、そうそう事故は起こしません。
 道を知らない地方出身者のタクシー運転手にあたると不愉快ですが、多少回り道をする程度の損害で済みます。
 腕の悪いタクシー運転者は、長距離の指名もないでしょうし、客の上手な拾い方を知らないでしょうから、淘汰されていきます。


 これらの職業なら「自然淘汰」されても、誰も被害は受けません。


 おそらく、弁護士と対比されるべきなのは医師でしょう。

 医師は、虫垂炎「程度」の病気でも医師のミスで死亡します。もっとも、虫垂炎は、腹腔内の病気ですから、もともと死につながる可能性のある危険な病気です。

 弁護士は、医師と異なり命こそ取られませんが、能力のない弁護士にあたったのでは、最悪の場合、大きな財産を失うことがあります。離婚訴訟の不手際で、一生を棒にふるかも知れません。
 なお、刑事事件も、執行猶予になれば、従前どおりの生活が続けられる可能性があれますが、実刑になると一家離散となるかもしれません。

 もちろん、病気が重ければ、どんな名医であっても最悪の事態を回避することは不可能でしょうし、どんな名弁護士でも明らかな負け筋事案を勝訴に導くのが無理であるとことは言うまでもありません。

 だからといって、弁護士は「いくらいてもいい」「自然淘汰に任せればよい」「悪い弁護士は資格を剥奪すればよい」ということは誤りでしょう。
 医師が「いくらいてもいい」「自然淘汰に任せればよい」「悪い医師は資格を剥奪すればよい」と言っているのと同じことです。

 被害者が続出したの後の「自然淘汰」「資格剥奪」で十分というのなら、何のための医師国家試験があるのか、何のための司法試験があるのかわかりませんね。
 私は、「自然淘汰」「資格剥奪」される前の医師にかかって、命を落としたり、身体障害者になりたくありません。

 おそらく、弁護士は自然淘汰されればいいという「門外漢」の方々は、弁護士の仕事が、いかに事件当事者の人生に、よい影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあり、その事案によっては、その人の一生を左右するということを知らない方々だと思います。
 ある意味、医師よりも「すか」をひけば悲惨かも知れません。
 弁護士の腕が悪いことによる「自分の大損」+「にっくき相手の大もうけ」、うつ状態になっても不思議ではありません。極端な話、一生、不愉快な気持ちで過ごさなければならない可能性があります。

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