本文へ移動

2012年バックナンバー

裁判官の懲戒処分

大阪地方裁判所の2年目の裁判官が「盗撮」事件で逮捕されました。

 国家公務員の懲戒処分については、国家公務員法82条には、以下のとおり定められています。
 「職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる」
 「免職」「停職」「減給」「戒告」です。
 実務上は、その他、「訓告」「厳重注意」などがあります。

 ちなみに、「諭旨免職」は、任命権者が公務員の非行を諭し、自発的に辞職するように促す退職勧奨で、これに応じて退職すれば「諭旨免職」といわれます。
 「免職」といいながら、通常の退職手当が支給されることに、非難が上がったため、現在ではこの用語は使われず、報道では「減俸3か月の処分となり、同日付で依願退職した」などと表現されます。


 裁判官の懲戒処分は、一般公務員と異なります。
 憲法78条には、以下のとおり定められています。
 「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない」
 憲法80条2項には、以下のとおり定められています。
 「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」

 「裁判官弾劾法」をご覧ください。
 国会議員から構成される「裁判官弾劾裁判所」により、罷免の裁判の宣告により罷免されます。
 資格回復の裁判がない限り、法曹資格を最低5年失います。
 なお、きびしい裁判であることから、裁判官訴追委員会が「訴追猶予」にすることもあります。
 神戸地方裁判所所長の痴漢事件では、事件後、高等裁判所判事に転補のうえ、依願退官となりました。裁判官訴追委員会は「訴追猶予」にしています。
 実際は「諭旨免職」に近いですね。

 ちなみに、裁判官は、その身分にあることから、一定の報酬を受け取ることができるので「停職」「減給」はありません。
 いわば「中間」の懲戒処分がないのです。

 「裁判官分限法」をご覧ください。
 裁判官分限法2条に以下のとおり定められています。
 「裁判官の懲戒は、戒告又は1万円以下の過料とする」

 ということで、裁判官の懲戒には、法的には「罷免」「戒告」「1万円以下の過料」しかありません。
 実務上は、他に「口頭による」「厳重注意」があります。裁判官のミス、監督不行届などの場合です。
 神戸地方裁判所所長の痴漢事件のように、依願退官、実質「諭旨免職」もあります。

 

 裁判官が「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判」されることは珍しいです。
 回復を待っていますから、裁判官が、長期療養中に自殺した場合、現職裁判官が「自殺」ということになります。

 ただ、裁判官が、船から飛降り自殺して死体が発見されない場合などは、「速攻」「回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判」して、報酬が遺族に支払われないように手続きをとります。
TOPへ戻る