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2013年バックナンバー

自衛隊の戦車の削減

政府は、平成25年12月17日に決定した「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」において、本州への戦車の配備をやめて、北海道と九州に集約させる方針を示しました。

 陸上自衛隊の効率化を進め、離島奪還作戦を担う水陸機動団や新型輸送機MV22オスプレイを抱えるヘリコプター団に人員や予算を集約したい考えによります。
 戦車削減分の 防衛予算を、ミサイル防衛システムの向上や離島防衛のための装備品にあて、弾道ミサイル迎撃用のSM3ミサイルを搭載するイージス艦を2隻増やして全8隻とする予定。護衛艦の総数も現在の48隻から約10隻増やす見込みです。


 現在約700両ある戦車は約300両に減らします。
 しかも戦車は、北海道と九州に集中配備するとし、本州には戦車部隊を配備しない方針です。

 大規模な戦闘を想定した冷戦型の陸自の態勢から、効率的な配備を重視したものといえます。
 代わりに戦車と同様に砲を持ちながら、高速移動できる機動戦闘車99両を機動師団・旅団に新たに配備します。機動戦闘車は8輪タイヤを使うため、一般道を走行でき、新型輸送機「C2」で各地に展開できるという話です。


 「そもそも日本に敵陸軍に上陸されるようなら敗北確定。戦車というか陸戦に備えること自体が無駄。それより戦闘機や護衛艦を増やせ」という陸上戦力不要論があります。

 しかし、これは「極論」です。

 従来、本州にも戦車が配備されていたのは無駄だったのでしょうか。
 そうではありません。

 日本侵略のため、上陸作戦を成功させるには守備側の3倍の兵力が必要とされます。
 日本に戦車がある場合、敵侵攻部隊も相応の数の戦車を用意する必要があります。
 1両約50トンもの戦車を数百両も海上輸送する大輸送船団を準備し、かつ護衛の戦闘艦艇もそろえなければならないなど侵略側は多大な負担を強いられます。
 それが「抑止力」につながるということです。

 また、日本に敵国の工作員が紛れていて、市街地でゲリラ戦が起きる可能性もあります。


 戦車には3つの特徴があります。

 大砲による攻撃力、装甲による防御力、キャタピラによる機動力です。

 大砲による攻撃力は、戦車砲が、「戦車以外」の装甲車を撃ち命中すれば、撃破可能です。
 装甲による防御力は、戦車砲で撃たれても大丈夫(正面ではなく、側面背後は若干脆弱です)というくらいです。
 キャタピラによる機動力は、でこぼこした地形でもストップしたり、転倒したりせずに走れます。

 対戦車兵器(戦車ミサイルや対戦車ロケット)を使うことで歩兵でも戦車を撃破可能です。
 しかし、対戦車兵器(戦車ミサイルや対戦車ロケット)を装備した対戦車部隊は、機動力がないことから、銃で装備した歩兵に劣ります。
 戦車は、もちろん、歩兵に勝ります。

 戦車、対戦車部隊、歩兵は、じゃんけんの「石」「はさみ」「紙」(順不同)で、どれかを欠くと、戦術上「まずい」ということになります。
 双方、すべてをそろえて戦うことが当然の前提となります。
 戦車がないと、単に、敵方の多数の歩兵だけで敗戦となります。

 戦車は、必要です。

 なお、山地が多い日本には戦車は不要とする極端な意見もありますが、朝鮮戦争で同様に山地が多いとしてわずかな軽戦車しか配備しなかった国連軍(米軍)は、北朝鮮軍の主力戦車T-34/85の攻撃で敗走を重ね苦戦した歴史があります。

 なお、市街地で北朝鮮の特殊部隊などと戦うというような状況なら、特殊部隊が持込めない戦車は、歩兵とともに行動すれば、悠々勝利できますが、戦車がないと、自衛隊の損害は大きいでしょう。


 中国は、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、ドック型強襲揚陸艦の建造にも乗出しています。自衛隊も装備更新が急がれています。

 ただ、しかし予算の制約などから「しわ寄せ」を受けているのが陸上自衛隊で、主力といえる戦車の数が半数以下へと大幅に削減される方向で、さらに、本州では全廃の可能性が濃くなっています。

 大丈夫なんでしょうか

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