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よもやま話 バックナンバー1/2

貧すれば鈍する

 「貧すれば鈍する」という言葉があります。

 貧乏をすると、頭の切れる人でも愚かになる、あるいは、貧乏すると生活に追われて、どんな人でもさもしい心を持つようになるという意味です。

 弁護士が、預り金を横領するという事件は、ある意味、昔からあった「不祥事」です。

 まず、弁護士自身のお金と、弁護士が他人から預かったお金の区別をしなければなりません。

 弁護士職務基本規程38条には「事件に関して依頼者、相手方その他利害関係人から金員を預かったときは、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にする方法で保管し、その状況を記録しなければならない」となっています。

 弁護士職務規程は、平成16年11月10日、「弁護士倫理」に替わるものとして「弁護士職務基本規程」を会規として制定しました。
 また「預り金」については、各単位弁護士会で定めがありました。大阪弁護士会なら平成11年1月1日施行の「会員の業務上預り金の保管方等に関する規程」が、弁護士職務基本規程より詳細かつ具体的に定めています。

 以前は、「区別をしていなかった」「預かり金分まで引下ろしていたとは知らなかった」と弁解する弁護士さんもおられたようですが、「預り金であることを明確にする方法で保管しなかった」というところでアウトです。

 一般事件の預り金は、報酬と費用を引いて依頼者に渡すための一時的なものですから、横領すると、依頼者には一目瞭然となりますから、発覚は比較的早いです。

 あとは、破産管財人として管理中の預金を横領したり、相続財産管理人として管理中の預金を横領したり、成年後見人として保管中の預金を横領したりと、手口は様々です。
 相続財産管理人や成年後見人は、監督が甘くなりがちですから、被害額が大きくなりがちです。

 その昔は、投資用不動産や株、場合によっては先物などに手を出して莫大な借金をつくった弁護士、身分不相応な生活をしていた弁護士などが、預り金に手を出したというのが多かったようです。

 ただ、このところ、弁護士増員の影響もあり、投機や分不相応な贅沢という自己破滅型の弁護士だけではなく、普通に生活をしているものの、売上が上がらず、事務所運転資金や生活費に窮して、預り金に手をつけるという弁護士が出始めています。
 金額が「みみっちい」のに、弁償もできないという例があり、ある意味「恰好悪い」ですね。
なお「どうせやるなら大金」という趣旨ではありません、「絶対やってはならない」という趣旨ですから、念のため。

 なお、どういうわけか、被害弁償をした場合、弁護士会の懲戒処分が軽くなりがちです。
 万引きは窃盗で、捕まってから代金を支払っても、罪が軽くなったり、罪がなくなったりするわけではありません。
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