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司法 バックナンバー 1/3

統一修習

司法修習生の給付制と貸与制が政治的に一応の決着をみました。
 結局、1年間、給付制延長の政治的決着でした。
 給与だけではなく、健康保険や年金の関係がありますから、給付制と貸与制の差は、かなり大きいといえます。

 司法試験の合格者は司法修習生となれます。
 「司法修習」を終了すれば、判事補・検事(2級。年月を経れば自動的に1級になります)・弁護士となることができます。

 公務員に準じた身分で、兼職は禁止です。

 最高裁判所のホームページにも「司法修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者に対しても、同じカリキュラムで行われます(統一修習制度)」「この統一修習制度は、司法官(判事および検事)の養成と弁護士の養成を二元的に行っていた制度を改めたものであり、昭和22年に司法修習制度が開始されて以来、我が国における法曹養成の一貫した方針となっています」「それぞれの立場からの事件の見方を学ばせることにより、広い視野や、物事を客観的、公平に見る能力を養うとともに、法律家間の相互理解を深める意義もあります」「このような統一修習制度は、国際的に見ても特徴のある制度であり、我が国において、高い評価を受けています」とあります。

 なお、昭和22年に「統一修習制度」になったのですから、その前は違っていたことになります。

 試験は「高等試験司法科試験」で「統一試験」です。
 司法官(裁判官・検察官)になるには試験合し「司法官試補」に任命され、1年6月の実務修習の後、考試に合格することが必要でした。「戦前の司法制度」によると「有給」だったそうです。
 弁護士になるには、「高等試験司法科試験」に合格し「弁護士試補」として1年6月以上の実務修習を終え、考試を経ることが必要でした。「戦前の司法制度」によると「無給」だったそうです。
 弁護士会が「給付制」にこだわるのは、有給の「司法官試補」と無給の「弁護士試補」が「トラウマ」になっているからかもしれません。

 修習期間は、以下のとおりです。ずいぶん短くなっています。
 私の当時は、2年間、4ヶ月の前期修習、1年ヶ月の実務修習(民事裁判・刑事裁判・検察・弁護)、4ヶ月の後期修習がありました。

 旧司法試験合格者対象の司法修習
1期~52期(平成10年4月修習開始)2年
53期(平成11年4月修習開始)~59期(平成17年4月修習開始)1年6月
60期(平成18年4月修習開始)~1年4月

 新司法試験合格者対象の司法修習
新60期(平成18年11月修習開始)~1年

 司法修習生の給付制と貸与制でもめるくらいなら、いっそ司法修習を「やめてしまえ」という議論も出そうです。

 ただ、裁判所、検察庁、弁護士会、いずれも「反対」でしょう。
 「統一修習制度」には、メリットがあります。
 「それぞれの立場からの事件の見方を学ばせることにより、広い視野や、物事を客観的、公平に見る能力を養うとともに、法律家間の相互理解を深める意義もあります」というのは表向きのメリットでしょう。

 裁判所、検察庁からすると「表だって言えない」メリットがあります。

 裁判所は、裁判官希望の修習生が、裁判官としてふさわしいかどうかを、司法研修所の裁判教官が、前期後期修習で確認し、実務修習地の裁判官が、民事裁判・刑事裁判修習で確認します。「これは」と思われる裁判官希望の修習生が、検察官や弁護士志望に変更しないよう「つなぎとめ」ます。
 検察官志望や弁護士志望の修習生の中でも、裁判官にふさわしいと考えられる修習生を、裁判官を志望するように勧誘します。
 雇用者側の「リクルート活動」ですね。

 検察庁も同じ事です。
 司法研修所の検察教官と実務修習地の検察官が、雇用者としての「リクルート活動」をします。

 裁判官や検察官は、1度「不適格者」を任官させると、簡単に退官させるわけにはいきません。
 慎重に慎重を重ねるのですね。

 昔から「分離修習論」はあります。「司法官試補」は公務員になるから有給、「弁護士試補」は弁護士になるから無給とする戦前への回帰です。
 常識的に考えて、戦前の「司法官試補」と「弁護士試補」との分離修習は、裁判所、検察庁、弁護士会、いずれも反対するでしょうから、実現する見込みはなさそうです。
 ただ、「貸与制」にしておいて、裁判官、検察官になったものには「返済免除」という選択肢は「あり」です。

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