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司法 バックナンバー 1/3

旧司法試験の受験回数の制限

前回のコラムで記載したとおり、かつて、司法試験には、受験回数の制限はありませんでした。

 毎年500人しか合格しませんから、受験回数の制限がなくても、試験に合格できない人がでてきます。
 毎年毎年、新しい受験生が出てくるのですから、当然といえば当然です。

 私は、司法試験を受験するにあたり、予備校に通っていません。

 といいますか、昭和52年当時、司法試験の予備校はなかったでしょう。
 せいぜい、大学の中で、先輩合格者が後輩を指導するという程度でした。
 司法修習生の同期には、「後輩の論文の添削をしなければならない」という人がいました。建前は、修習生は、アルバイトをしてはならないことになっています。しかし、現実には「?」がつくところです。

 基本的に、私の知っている人は、合格者ばかりです。
 すぐに合格した人もいますし、相当苦学して合格した人もいます。
 でも、合格していますから、裁判官、検察官、弁護士として活躍している人ばかりです。


 ところで、試験に合格できない人はどうなったのでしょう。

 早々と「見切り」をつけた人は、通常の民間会社に就職したり、国や地方公共団体の公務員になれていたと思います。
 一定の年齢制限がありますから、就職がかなわなかった人がいたでしょう。
 ただ、自己の危険負担ですからやむを得ません。
 私は「社会的に損失である」という議論は好きではありません。


 基本的に、私は、試験に合格できなかった人には、お目にかかっていません。

 しかし、たまたま目にすることがあります。
 昔、結婚式に招待されることがありました。
 たいていは「新郎友人」ということですが、結構、ひな壇に近いテーブルに座らされます。

 新郎が、裁判官、検察官、弁護士いずれでも、裁判官、検察官、弁護士は出席しています。上司はもとより、指導担当者も招待されるからです。
 時々、新婦も、法曹関係者、あるいは、その子女などということもあり、結婚式場で裁判ができそうな顔ぶれになることがあります。

 テーブルの配置表をみると「奇妙な」テーブルがあります。
 「肩書き」が「ばらばら」なのです。
 例えば、裁判所職員、その他公務員、司法書士、法律事務所職員、塾講師など、いろいろです。

 最初は意味するところがわかりませんでした。
 祝辞などを聞いて、どういうテーブルか見当がつきました。
 新郎が司法試験受験時代に通った予備校のクラスメートの集まりです。

 初志を貫徹した人は、裁判官、検察官、弁護士として、ひな壇に近いところに着席しています。

 司法試験に合格しなかった人が、裁判所職員、その他公務員、司法書士、法律事務所職員、塾講師として出席しているのですね。

 それを見て「司法試験に合格なんかしなくても全く問題ない」と隣の人に話したことがあります。
 隣に座っていた、予備校での勉強を経験した人は、「結婚式に出席している人はいい」「それなりに、しっかりとした人生を送っている」「問題は、出席していない人だ」「どこにいるのか、何をしているのかさえわからない」と説明してくれました。

 一つ賢くなりました。
 「どこにいるのか、何をしているのかさえわからない」人もいるのですね。
 受験回数に制限があれば、少なくとも、結婚式のテーブルに座ることも可能だったのかも知れません。

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