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司法 バックナンバー 1/3

弁護団事件

 「弁護団」あるいは「弁護団事件」という言葉をご存じでしょうか。

 一応「弁護団」とは「複数の弁護士のかたまり。大きな事件ほど大規模になる」と定義されています。

 しかし、通常、弁護士が「弁護団」あるいは「弁護団事件」という場合、上記の定義のように単純ではありません。

1 弁護士が複数なだけでは「弁護団事件」とはいいません。
  ある程度難解な事件について、一事務所から複数の弁護士が担当することはよくありますし、極端な話、新入の弁護士指導のために、ベテラン弁護士が後見役としてつくという事件もあります。「弁護団事件」とはいいません。
  ある程度大きな倒産事件は、規模の大きな事務所の独占で、弁護士数人がかりで担当しますが、これは「弁護団事件」とはいいません。
  訴額が大きく複雑な事件など、1人だけでは「手に負えない」ときは、他の事務所の他の弁護士と組んで事件を担当しますが、これも「弁護団事件」とはいいません。

2 弁護団事件は、通常「世上をにぎわす大きな事件」を指します。
  「大きな」というのは、必ずしも「金額が大きい」ということを意味しません。
  もちろん、金額が大きい事件もあるのですが、社会的影響の大きい民事事件や行政事件で、金額が小さいこともよくあります。
  また、刑事事件は、通常大きな報酬は望めません。
  手弁当であることも結構あります。

3 また、弁護団事件は、一事務所だけではなく、訴訟の趣旨に賛同した、様々な事務所の弁護士の集まりです。担当する弁護士数は別として、100人をこえることは珍しくありません。


 「弁護団事件」は、労だけ多くして、報酬という点では恵まれていないことが多いです。
 しかし、様々な弁護士と知り合いになり、ネットワークを築けば通常の仕事を紹介されたりして有利になることもありますし(能力がなかったら紹介されませんが)、諸先輩の仕事のやり方などがわかり、自己研鑽にもなります。
 これで「もと」はとれますね。
 また、団長、事務局長をして、マスコミに取り上げられれば、自分自身の宣伝にもなります。


 ということですが、私自身は、「弁護団事件」はしたことがありません。

 「弁護団事件」への加入は、通常、先輩弁護士が、若手弁護士に声をかけることから始まります。
 私は、弁護士になったときに、裁判官経験10年でしたから、「勉強のため」「弁護団かに入りませんか」という誘いはありません。
 また、特定の思想信条や、強い特殊分野があるわけではありませんから、「弁護団」に入らないかとも言われませんし、入ろうという気もありません。
 さらに、私は「自分でコントロールできない」範囲の仕事はしません。他の弁護士と組むときも、任せっきりにせず、一応、チェックしながら仕事をします。


 ただ、私自身、訴額が大きく複雑な事件など、1人だけでは「手に負えない」ときは、他の事務所の弁護士に誘われたり、他の弁護士を誘ったりして、他の弁護士と組んで事件を担当することはよくあります。
 弁護士報酬を、2分の1にしても「割に合う」ということですね。

 私自身は、10人以上の先輩・同期・後輩の弁護士と組んで事件をしたことがあります。1人1回ではありませんから、のべにすると結構な数になります。
 最初は同期、次に先輩、さらに後輩などからも声をかけられます。ありがたい話です。
 また、先輩には声をかけませんが、同期、後輩に声をかけることがあります。

 声をかけられる場合、私の役割は、主として「書面作成」ということが多いです。
 裁判官経験がありますから、書面作成は、得意とするところです。
 もちろん、経済的には、通常「ペイ」します。


 やはり、私は、「集団行動」には、あまり向いていないようです。
 「自分でコントロールできない」範囲の仕事しかしない以上、仕方がないですね。

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