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トリビア バックナンバー 1/2

暗号など

ある人がある人に伝えたいようにしている内容を、他の人に知られないようにしたいとします。

 秘密性が低ければ、親展の手紙を出せばいいですし、通信の秘密は守られることになっていますから、電話で話しても問題ありません。
 互いに外国語ができるなら、外国語で話せばいいだけですが、英語で話をしていると、思わぬ所に英語がわかる人がいますから注意が必要です。
 なお、私がドイツ滞在中、ドイツ人同士が、私のことを話のネタにしていました。概ね、悪い話ではありませんでしたが・・

 どうしても知られたくなければ、暗号を使います。

 「暗号」は、情報の意味を当事者以外に隠すために情報に変換を施すことと定義されています。

元の情報を「平文」といい、変換された情報を「暗号文」という。「平文」から「暗号文」への変換を「暗号化」といい、「暗号文」から「平文」へもどすことを「復号」といます。
 暗号化は「暗号化鍵」というパラメータを持つ変換であり、復号に際して用いるパラメータを「復号鍵」といいます。単に「鍵」ともいいます。
 ちなみに、「鍵」を知らせられずに「平文」を復元することを「解読」といい、復号とは区別されます。

 また、似たような役割を果たすのに「ステガノグラフィー」があります。
 埋め込むデータは「秘密文」といわれ。埋め込む先のデータを「カバーデータ」と言われます。
 カバーデータは、画像データ、音声データ、テキストデータなど何でもありです。

 一方、ステガノグラフィーというのは、意味だけでなく、通信の存在そのものを隠しますが、他方、暗号では意味がわからなければよく、存在は知られても構わないという違いがあります。

 まず、ステガノグラフィーは歴史が古く、ヘロドトス(紀元前5世紀)の歴史書に、木の板に書いた文をワックスで隠した例が挙げられています。
 また、奴隷の髪の毛を利用する方法もあったそうです。奴隷の頭髪の一部を短く刈込み、髪の毛を伸ばしたところで、相手方のところに行かせ、髪の毛を短く切れば、「秘密文」があらわれます。気の長い話ですが・・

 なお、テキストに織込んだ「秘密文」としては、在原業平の短歌「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」(古今和歌集)が頭の字をつなげると「かきつばた」となるというのが有名です。

「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす」という「いろは四十七文字」(作者不明)ですが、これをステガノグラフィーとみる説もあります。

いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
 と分解して、最後の1文字をつなげて「とかなくてしす」つまり「咎なくて死す」と無実を訴えたという説もあるようです。


 次に、暗号です。

 四大文明のうち、中国を除くエジプト、メソポタミア、インドでは「換字」を中心とする暗号が既に用いられていたそうです。「換字」は、文字を他の文字に置き換える方式の暗号です。
 中国の漢字は、「換字」が難しいでしょう(「だじゃれ」ではありません)。

 その後、現代に至るまで途切れることなく、暗号は使われてきましたし、これからも使われるでしょう。主として、戦争が絶えなかったため、暗号が軍事利用されたからだと言われています。

 暗号で、もっともポピュラーなのは「換字法」です。
 換字法では、アルファベットを何文字かずらすタイプの「カエサル暗号(シーザー暗号)」がよく知られています。ずらさなくても、コナンドイルのように、踊る人形にすることも可能です。
 もとの文章が何語で記載されているかわかれば、比較的「解読」は容易です。

 文字の頻度で、わかる文字があります。
 英語ならe、t、a、o、i、n、・・・j、x、q、zの順です。

 また、文字のかたまり=単語と、その一部でわかることがあります。
 英語なら、the、ドイツ語なら、schですね。

 情報理論で有名なシャノン(Claude Elwood Shannon)は20世紀なかばに暗号の数学的理論を展開し、冗長性と解読可能性の関係などを明らかにし、実用的で強い暗号の構成法も示しました。

 しかし、19世紀頃にはこのような単純な暗号は、変換ルールが固定の1対1写像である限り、どのような変換であっても解読可能であることが知られていて、以来、暗号解読されないように、色々な改良が行われ、様々な換字式暗号が登場しました。

 20世紀なって開発された機械式暗号であるエニグマ暗号も換字式暗号の一種です。
 ドイツ文である限り、いずれわかるのでょうが、当時はコンピュータがなかったので、手取り早く、ドイツ軍の残置した受信機から、案外早く判読されていたそうです。
 なお、チャーチル首相は、ドイツ軍がコベントリーという町を空襲することが、わかっていたにもかかわらず、ドイツ軍のエニグマを、イギリス軍が暗号を解読したことを知られたくないため、避難命令を出さず、町を見殺しにしたというエピソードがあります。避難命令を出していたら、エニグマが解読されていることをドイツ軍が知ってしまいます。

 なお、大日本帝国の「紫暗号」が解読されていたのは有名で、山本五十六連合艦隊司令長官が「紫暗号」などを解読され、昭和18年4月18日、南太平洋の前線巡視に向かうところを、山本司令長官の搭乗機が待ち伏せた米軍機に撃墜されて長官らが死亡したということは有名ですね。

 暗号も、コンピュータ化が進んでいます。
 ここまでくると、SSL(Secure Socket Layer)とかいわれても、よく鍵のマークが右下に出てるとか、銀行のホームページに接続していると、暗号化されていますというメッセージが出るくらいしかわかりません。
 ただ、人のやることですから「絶対」はないでしょうね。

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