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交通事故

外貌の醜状

男女差別という言葉があります。

 通常は、女性が不利、男性が有利な場合を指すことが多いようです。
 もっとも「逆差別」とも呼ばれる、男性が不利、女性が有利な場合もあります。

 大して影響がないものは、国公立の女子大学です。
 具体的には、奈良女子大学とお茶の水女子大学は、「逆差別」でしょう。
 もっとも、女子大学に入学したいという受験生が裁判を起こさない限り、裁判所の判断は出ません。
 また、痴漢防止のための「女性専用車両」を「逆差別」であるという人もいます。いずれにせよ、大した問題ではありません。

 弁護士をしていて、「逆差別」と思うのは、交通事故により、顔面に醜状が残った場合の後遺障害の等級です。

「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」は7級とされています。
「男子の外貌に著しい醜状を残すもの」12級とされています。

「女子の外貌に醜状を残すもの」12級とされています。
「男子の外貌に醜状を残すもの」14級とされています。

 「著しい醜状を残すもの」とは、顔面の場合、整形手術をしても、鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5cm以上の線状痕または10円玉大以上の組織陥没などが残った場合です。
 「醜状を残すもの」とは、顔面の場合、整形手術をしても、10円硬貨大以上の瘢痕、長さ3cm以上の線状痕などが残った場合です。

 7級の後遺障害とは、大阪地方裁判所の基準によれば、慰謝料は1000万円です。
 12級の後遺障害とは、大阪地方裁判所の基準によれば、慰謝料は280万円です。
 14級の後遺障害とは、大阪地方裁判所の基準によれば、慰謝料は110万円です。

 外貌に著しい醜状がを残ったとき、女性の慰謝料は1000万円、男性の慰謝料は280万円と720万円の差があります。
 外貌に醜状がを残ったとき、女性の慰謝料は280万円、男性の慰謝料は110万円と2.5倍の差があります。

 さらに、後遺障害によって、将来の労働能力が喪失したとされるのですが、7級は56%、12級は14%、14級は5%と大きな差があります。
 67歳までですから、結構大きな差が出ます。

 厚生労働省の専門検討会は、平成22年11月19日、労働災害で顔などに大きな傷跡が残った場合の補償額について、女性よりも男性の方が低くなる現行の障害等級を見直し、男女平等にすべきだとする報告書案をまとめました。

 報告書案では、男女平等を目指す社会状況などから「男女差を残すべき必要性は認められない」とし、男性の等級を引き上げ、「著しい醜状を残す」場合は男女ともに7級に認定し、「醜状を残す」場合も、男性の等級を引き上げ、「醜状を残す」場合は男女ともに12級に認定するよう提言しています。

 さて、法制化がされる見込みです。

 なお、現在の基準では、女性に限り、整形手術をしても、顔面に、10円硬貨大以上の瘢痕、長さ3cm以上の線状痕などが残った場合12級として慰謝料が280万円支払われます。
逆にいうと「女性の顔面に、10円硬貨大以上の瘢痕、長さ3cm以上の線状痕などが残った」としても、280万円の慰謝料に過ぎません。
 例えば、不貞の相手方に慰謝料請求をする場合、「女性の顔面に、10円硬貨大以上の瘢痕、長さ3cm以上の線状痕などが残った」程度の精神的苦痛とまでは言いにくいでしょうから、慰謝料は、280万円を下回るという理屈になります。

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