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債務(借金)問題

債務・借金

未払賃金の立替払制度

不幸にして、勤務先の会社が倒産したとしましょう。
 退職金はもちろん、解雇予告手当が未払い、さらに未払い賃金があるとします。

 労働債権は、公租公課などとともに、最優先(ともに一部制限があります)で配当が受けられます。
 もっとも、倒産した会社に財産がなければ「絵に描いたもち」ですね。

 このような場合、労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度が利用できます。
 制度の詳細は、 「労働者健康福祉機構のホームページ」 をご覧になって下さい。

 要点を説明します。

 まず、立替払の対象となるのは、未払の定期給与、退職金の8割です。もっとも、年齢による限度額があります。
 未払い給与算定の基礎となる「平均賃金」とは、原則として、算定事由発生日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます。

 但し、慣行的に、適宜退職金が支払われていた場合、つまり、退職金規程がなければ、退職金は支払われません。
 大会社は別ですが、小規模の会社には退職金規程がみつからないことがあります。もっとも、労働基準監督署の就業規則があり、その中に退職金規程があることがありますから、あきらめるのは禁物です。

 まず、会社が正式に破産し、破産管財人が選任されている場合を考えてみます。
 立替払は、「未払賃金の立替払請求書・証明書」を労働者健康福祉機構に提出することによって支払の手続が開始されます。
 立替払の請求ができる期間は、裁判所の破産手続開始決定(昔流にいえば「破産宣告」)の日の翌日から起算して2年以内となっていますが、そんな時間的な余裕のある人はいないでしょう。
 書類は「未払い賃金の立替払請求書・証明書」「未払賃金の立替払請求書の記入例・注意事項」「源泉徴収票」などが必要です。
 ある従業員が、どの程度にわたり勤務しているかは、賃金台帳をみればわかります。

 もっとも、一般の方に、未払い給与算定の基礎となる「平均賃金」とは、原則として、算定事由発生日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金のことですが、(元)従業員に、総額などわかるわけがありません。
 破産申立人代理人弁護士が起案するか、管財人である弁護士が起案するかいずれかですが、結構、弁護士間で対立することがあります。

 つまり、本来、未払賃金の立替払制度の申請書作成や各種書類の準備は、解雇された従業員がなすべき事です。
 破産申立人代理人弁護士も管財人である弁護士も、自分の仕事ではありません。
 破産申立代理人は、破産開始決定で実質終わり、あとは、不備な点の追完や、債権者集会の出席などです。
 本来、管財人は、従業員が持ってきた書類に管財人の印鑑を押すだけです。
 

 法律家は優しいですね。破産申立人代理人弁護士、あるいは、管財人弁護士が、記入方法や計算をしてくれます。

 ある緯度大規模になり、タイムカードなどが必要となれば、管財人は社会保険労務士を、予納金や破産管財人が集めた金銭で雇います。
 しかし、問題になるのは、中途半端な零細会社です。

 基本的に、「優しい」弁護士がやります。
 申立代理人になるとき、先に、その分の報酬をもらっていないと割が合いません。
本来は管財人の仕事と思いますが、管財人が「サボタージュ」を決め込み弁護士同士がにらみ合ったときに、従業員から突上げを食うのは、会社と前代表者、その代理人がせざるを得なくなります。

 私は、管財人の時は、タイムカードなどを含め資料が全部手許にありますから、自分で作成していました。
 ということは、得をしていた弁護士がいたのですね。

  あと、事実上の倒産(破産手続きをせず、代表者が夜逃げ)の場合は、きわめて難しくなります。
 弁護士が関与する破産であれば「だまされる」心配はありませんが、そうでない場合は、「立替金請求」には「詐欺的請求」が多く混じってきます。

 ということで、時間もかかるし、資料が怪しいなどの理由で、なかなか立替されません。

経営者たるもの、せめて最後くらいは、破産申立てをして従業員を路頭に迷わせないようにするのが最低限度の責務であると思います。

西野法律事務所
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