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身近な法律問題

法文の平易化

私が小六法を購入して、法律の勉強を始めたのが、大学2年生のはじめころのことですが、当時は、このような条文がありました。

 刑法35条2項「罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス」(つみもと おもかるべくして おかすときしらざるものは そのおもきにしたがいて しょだんすることをえず)

 わかませんよね
 これがわかれば、たいしたものだと思います。
 ちなみに、私は、大学1年のころ、ゼミ(法律のゼミではありません)の先生の「お薦め」だった郷土の偉人、陸奥宗光の蹇々録(けんけんろく)」などを読むなどしていましたので、読むこと自体には抵抗はないですが、意味は「さっぱり」わかりませんでした。

 現在の刑法35条2項は、「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。」となっています。

 これでもわかりにくいですかね。

 たとえば、田舎のバス停で、バスが走り去りました。カバンがバス停の長いすの横に残っていました。「さっき来たバスに乗った人がわすれていったようだ」「これはもうけ」ということで、犯人はカバンを持ち去りました。しかし、カバンは、バス停付近の店で、長い間トイレに入って、バスに乗り遅れた被害者のもので、追いかけられて捕まってしまいました。

 犯人は、いわゆる「猫ばば」(占有離脱物横領)のつもりで「盗み」(窃盗)のつもりはありません。
 しかし、カバンは、トイレにいた人がおいたもので、「置き忘れ」られたものではありませんから(「占有」は「離脱」していないことになります)、本来なら、窃盗罪で処罰されるはずのものです。しかし、犯人は、まさか、そんなことは思ってもいません。あくまでも「猫ばば」(占有離脱物横領)のつもりです。

 この場合、客観的には「窃盗罪」(盗み)ですが、犯人は主観的には「占有離脱物横領罪」(猫ばば)と思っていたのですから、「窃盗の故意」がなく、結局、「占有離脱物横領罪」(猫ばば)の罪でしか処罰できません。
 こういうことです。

 なお、私が法律の勉強を始めた昭和50年ころには「尊属殺人」という条文は残っていましたので、他人だと思って、鉄砲を撃って殺したら、実は親だった。「尊属殺人」ではなく「殺人罪」の罪でしか処罰できません。というわかりやすい例がありました。

 一般の人には、法律は難しいようです。
 もっとも、ずいぶん「まし」にはなっています。
 法律が難しければ「情報の非対称性」により、法律を知っている「法律家」が圧倒的に有利であり、通常の人は「法律家」に頼むしかありません。
 今の条文なら、少し気の利く人ならわかると思います。

 だんだん、易しくなっている条文ですが、明治十七年太政官布告第三十二号(爆発物取締罰則)の「第一条  治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」などは、そのまま残っているはずです。
 太政官とは、明治18年の内閣発足前の「太政大臣、左右大臣、参議及び各省卿の職制」ですから、内閣制度発足より古い法律が、経過措置によって、今でも生きていることになります。

 法文が難しい以上、法律家の「飯の種」は、「永遠に不滅」でしょうか。
 何か、聖書が難しいという理由で一般の人には聖書の内容がわからず(ラテン語が一般人には読めず)、解説する聖職者が、やりたい放題だった、宗教改革前のキリスト教のようであるというのは、いいすぎでしょうか

西野法律事務所
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