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身近な法律問題

委任と請負

弁護士の仕事のうち「勝敗」の結果を生じる仕事は、通常、「着手金」と「成功報酬」の2本立てになっていてます。
 勝敗の結果を生じない仕事とは、例えば「売買契約書の作成」「遺言書の作成」の手数料などです。
 なお、「着手金」「成功報酬」「手数料」を総称して「報酬」と呼びますから、紛らわしいといえば紛らわしいのですが、誰に文句を言ってもはじまりません。

 
 売買代金請求、貸金返還請求などの金銭請求事件は、着手金対成功報酬の割合を1対2としている弁護士さんが多いです。
 例えば200万円請求して150万円返ってきたとすれば、着手金は16万円(8%)+消費税、成功報酬は24万円(16%)+消費税となります。
多くの弁護士が、着手金対報酬の割合を1対2としているのは、平成8年の弁護士会報酬規定がそうなっていたからで、平成8年の報酬規定は、公正取引委員会が「カルテル」に該当すると判断したため、平成16年3月31日に廃止され、法的には無効になっていますが、今までどおり、平成8年の報酬規定を使用している弁護士さんが圧倒的に多いからです。

 笑い話のようですが、成功報酬を請求すると「着手金を払っているから、その分引いてほしい」という人が現実におられます。
 最初の説明を聞いていないんですね。いくら、ちゃんと「事件が成功した場合、着手金とは別に成功の割合に応じて成功報酬をいただきます」といっても「知らない」と言いはる方もおられます。「報酬契約書」を見せるまで納得しない人もおられます。

 弁護士との契約は、法律的にいえば「報酬特約のある」「委任」です。
 弁護士がミスなしに仕事をした場合には、仕事(法律行為)をしている以上、訴訟に勝っても負けても、訴訟が終結するまでにした仕事の分の報酬(これが「着手金」に該当します)はいただくことになります。敗訴したからといって、着手金を返還することはありません。

 「委任」と対照的なのが「請負」です。
 「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」(民法623条)となっています。
 請負は、仕事の「完成」という結果を求められます。例えば、建物が完成しなければ、バグのないコンピュータプログラムを作成しなければ、法的には、報酬を請求することはできません。特約で、着手金、中間金、最終金などの約定がある場合が多いと思いますが、「完成」しなければ「満額」はもらえません。「補修」や「バグつぶし」は、「完成」する義務を負う建築者・作成者の全額負担です。


 なお、医師の診療は、どちらに近いと思われますか。
 医師の診療は「報酬特約ある」「準委任」に該当し、委任の規定が準用されます。「患者が死んだ」からといっても、医師にミスがなければ、診療報酬はもらえます。
 当たり前の話ですね。
 事故、自殺などのわずかの例外を除き、ほとんどの人は病院・診療所で死亡します。
 死亡したからといって、診療報酬がもらえないというのでは話になりません。


弁護士は、「勝訴」することを「請負っている」わけではありません。
 医師は、「完治」することを「請負っている」わけではありません。

西野法律事務所
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