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身近な法律問題

偽証になりますか

裁判で、原告・被告の供述が真っ向からぶつかる場合があります。

 微妙な点なら、わからないでもないですが、貸金返還請求訴訟で、片方が「お金を貸した」、もう片方が「お金は借りていない」と全く正反対の供述をする場合、あるいは、交通事故の損害賠償請求訴訟で、東西の方向で道路を走っていた片方が「青信号で交差点に進入した」、南北の方向で道路を走っていたもう片方が「青信号で交差点に進入した」と全く正反対の供述する場合がよくあります。

 たいていの場合は、どちらかが「嘘」をついています。
 どちらかが、裁判を有利にするために「わざ」と、真実と違う供述をしているのです。

 しかし、両方とも「嘘」をついていないということもありえます。
 もちろん「真実」は一つですから、どちらかが、「客観的」に「真実に反する」供述をしていることになります。
 しかし、両方とも、「自分が正しい」と信じ切っているということは希ではありません。
 どちらかが「客観的」に「真実に反する」供述をしている、しかし、「真実に反する」供述をしている方が「自分のいうことは正しい」と信じ切っていれば、「嘘」をついていることにはならないことになります。
 そのようなことが、結構あります。

 心理学には詳しくないのですが、人には、自分に都合のいいように、記憶をねじ曲げる習性があるようです。

 最初のうちは「自分は、多分、赤で進入した」とわかっています。
 しかし、いつのまにか、「自分が、青で進入してたとしたらいいな」と思うようになり、さらに「自分は、青で進入していたかも知れない」、さらに「自分は、多分、青で進入した」、さらに「自分は、青で進入していたと思う」、さらに「自分は、青で進入した」、最終的に「自分は、絶対、青で進入した」「相手は大嘘つきだ」と、長い間に記憶が変わっていくのです。


 弁護士は、自分の依頼者が、本当のことを言っているのか、嘘をついているかは、大体わかるものです。
 しかし、双方の弁護士が、それぞれ自分の依頼者は、本当のことを言っていると信じ込んで訴訟をしている場合が、時々あります。

 人の記憶などは頼りにならないものです。
 人の決意も頼りになりません。「俺は○○はしない」「たぶんしないと思う」「しないんじゃないかな」「ま、ちょっと覚悟はしておけ」という流行歌がありましたよね。

 なお、民事事件では、原告本人、被告本人には偽証罪は適用されません。
 また、証人は「嘘」をつけば偽証罪にとわれるのですが、私の経験からして、偽証罪に問われたというのは聞いたことがありません。
「嘘」も、本人が信じ切っていれば、「偽証」にはならないのです。
 また、そういう逃げ道がありますから、刑事事件になりにくいということもあるようです。

西野法律事務所
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