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身近な法律問題

納期のない裁判

昔は、結構、裁判所の判決の言渡も悠長でした。

 弁護士の出す書面は、病気にでもならない限り、準備書面の延期などは認めてくれませんが、裁判所は、何といっても「お上」ですから、「判決言渡は何月何日に延期します。請書をファクシミリして下さい」で終わりです。

 弁護士としても、合議で難しい事件などは、あらかじめ、依頼者に「一応、判決言渡の予定日は何月何日と定められましたが、裁判所の都合で変更される場合があります。変更されるとしたら1か月先、再度変更されることもあります」と連絡しています。
 弁護士は判決言渡期日の延期には慣れていますが、依頼者としては、予定どおりにならないと「疑心暗鬼」になることもあるからです。

 もっとも、「裁判にも納期がある」といわれだした平成10年ころからは、結構、判決言渡期日が守られるようになったというのが印象です。
 もっとも、判決の説得力の低下傾向も同じころ、トレードオフなのかもしれません。

 ただ、裁判が「判決」だけなら問題は大きくありません。
 「判決」の場合、言渡期日は、よほどの例外でなければ「追って指定」=「期日未定」ということはありません。
 期日が決まれば、逆算して、記事に間に合わせるようにするのが人間ですから、判決の場合は「いつか。いつか」と待つことは、あまりありません。

 しかし、裁判には「判決」だけではなく、「決定」や「家事審判」もあります。「言渡期日」という概念がありません。また、最高裁判所の判決は、通常「言渡期日」が事前に通知されていません。
 いつ、裁判がなされるのかわからないのです。

 よく、痛い目にあうのは、家庭裁判所の相続の「審判」です。
 審理が終わってから、1年待ちはおろか、2年待ち、3年待ちということもありました。
 家庭裁判所というと、昔は、「婚姻費用分担」「養育費」の審判に半年かかるということもあります。夫の代理人の場合はいいのですが、妻の代理人の場合は、審判が延びると、生活にすぐ影響が出ます。審判前の仮処分という制度もありますが、やはり早くありません。
 今は「婚姻費用分担」「養育費」は、夫婦の収入で機械的に計算するようになりましたから、審判するまでもなく、決着するようになったので、ずいぶん楽になりました。


 また、仮処分の申立、異議、保全抗告でも痛い目にあいます。
 審尋を経る、つまり、双方の言分を聞いたうえで仮処分決定が出る事件は、本来急いでいるはずですが、結構待たされることがあります。さんざん待ったうえで、理由がちゃんと書いてあれば「まし」な方で、仮処分が認容される場合は、理由が「債権者の申立を相当と認め」と結論しか書いていないこともあり、「それなら何でこんなに待たすんや」と思わずつっこみたくなります。
 次に、仮処分が出たときには、仮処分を受けた側が、仮処分の異議をして覆そうとします。
 仮処分で、行動を縛られているわけですから、早く結論を出してほしいのですが、なんだかんだいって3か月、または、それ以上待たされることがあります。
 仮処分異議が認められなければ、高等裁判所に保全抗告をするのですが、やはり、行動が縛らたままですから、早く結論を出してほしいのですが、なんだかんだいって3か月または、それ以上待たされることもあります。
「納期」の決まっている判決が優先、「納期」の決まっていない決定は後回しです。同じ部で、あとから来た事件の「判決」が先に言渡されたことがあります。

 なお、ライブドアやブルドックソースなどの世間の耳目を集めている事件の仮処分などが早いのは、優秀な裁判官に、専属的に担当させているのでしょうから「短時間に」「よく練られた」決定がなされるのですが、ニュースバリューのない通常の仮処分などは、結構ゆっくり扱われてしまいます。


 あとは、文書提出命令の即時抗告も遅いことがよくあります。
 過払金返還訴訟で文書提出命令が出て、サラ金側が即時抗告すると、高等裁判所(地方裁判所に訴訟を提起していた場合)、あるいは、地方裁判所(簡易裁判所に訴訟を提起していた場合)で審理がなされるのですが、やはり、3か月以上放置されたことがあります。
 これも、「納期」の決まっている判決が優先、「納期」の決まっていない決定は後回しです。


 最高裁判所への上告、上告受理申立の結論も待たされることがあります。
 私の依頼者が、高等裁判所で敗訴して、上告、上告受理申立をしたのですが、2年ほどほっておかれました。
 待たされている間に、こちら側が、全く別の事件で、上告、上告受理申立をしたもの、相手側が、全く別の事件で、上告、上告受理申立をしたもの、3つか4つの事件について、最高裁判所の上告棄却の結論がでて事件終了、あとから来たいくつもの事件に順番を抜かされ、「一体、何をやっているんだ」という感じでした。

 こちらの依頼者は、ベトナムの合弁によるホテル事業に出資した人、出資先の会社に対し、ホテル建築が中断されていてホテル事業が頓挫した、少なくとも約束の期限どおりホテルは開業されていないから出資金を返せという事件でした。
 ベトナムで、他の事業者がホテルを完成させて、ホテルを開業したという知らせがあり、それから程なくして、「上告棄却」の決定が送付されてきました。
 今でも、最高裁判所は、ベトナムでホテルが開業されるかどうか待ってから判断したとしか思えません。


 まあ、そうは言っても「わざと」「怠けている」わけではないでしょうから、あきらめるしかないようです。

西野法律事務所
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