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身近な法律問題

スパイラル-裁判所の場合

弁護士になってから、民事担当の裁判官の上手・下手が「よく」わかるようになりました。
 裁判官時代は、基本的に、自分の事件か、自分が構成員となっている合議体の事件しか見ることができません。

 事件さばきのうまい裁判官は、記録を良く読んでいます。
 記録を良く読んでいれば、和解の成功率はあがります。
 事件を良く読んだうえ、こちらの弱い点はどこであると指摘し、相手方にも同様の指摘をしたうえで、このあたりが、和解として最良であると考える。これを元として、和解案を検討してくれないかと提示するわけです。
 裁判官が記録を良く読み、判例・文献なども熟読したうえでの和解提案なら、和解内容が極端なものでなければ、代理人弁護士も、本人を説得するのにやぶさかではありません。
 よって和解で事件が処理される数が多くなります。

 しかし、記録も読まず、判例や文献を調べていない裁判官が、「両者の中とって、どうですか」と和解提案してきます。
 これでは、和解どころの話ではありませんし、依頼者の説得も不可能です。
 ということで和解が成立せず判決が多くなります。


 和解は、裁判官にとって楽です。
 和解調書は書記官が基本的に書いてくれます。
 記録の細かいところまで見る必要がないわけですし、控訴審に行く心配もありません。

 これに対し、判決の書くのは、裁判官にとって大変です。
 記録の隅々まで見ないと判決はかけませんし、結構時間がかかります。判決を書くということは、結論に不満な当事者が控訴をする可能性が大きいということなので、高等裁判所で「ケアレスミス」や「あら」を指摘されるようないい加減な判決はかけません。

 ここで、事務処理能力の差が出ます。

 記録を良く読める裁判官は、和解をすることが容易になりますし、和解ができれば、他の事件の記録を良く読むことができ、他の和解ができやすくなります。質の高い判決を書くことが可能になれば、控訴をされない場合もあります。
 事件がどんどん減っていきます。
 ますます、記録が読めるという好循環になります。
 判決もよくできた判決になります。

 逆に記録を良く読めない裁判官は、記録も読まず、中をとったような和解案を提示するのでしょうが、和解ができるわけありません。
 その結果、判決ばかり書かされます。
 記録の細かいところにまで注意しなければなりませんから、判決を書くのに大きな手間をとられます。
 必要な時間がどんどん増えてきます。
 ますます、記録を読む時間がなくなるという悪循環になります。
 判決も「やっつけ仕事」のようになってしまいます。

 裁判官の事務処理能力の違いは当然あるのですが、事務処理能の違いが大きく増幅されて、事件数を減らせるか増やしてしまうか、事件を丁寧に扱い、丁寧な判決がかけるのかに大きな影響を与えます。

 これが刑事だと、全部判決を書きますから(一部調書判決)、民事ほどの差が出ないのかもしれません。


 なお、弁護士の立場からは、前記のとおり、裁判官が、記録を読んでいない事件の和解成立はむずかしいです。
 本人を説得しないといけないわけですが、記録を読んでいない裁判官の和解案で、説得しろというほうが無理というものです。

西野法律事務所
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