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身近な法律問題

刑事告訴

刑事告訴という言葉を聞いたことはないでしょうか。

「犯罪の被害者」が、警察官・検察官など捜査機関に対し「犯罪を申告し」「被疑者」の「処罰を求める」ことをいいます。
被害者でない者(被害者の親などが告訴できる例外もあります)が、捜査機関に対し「犯罪を申告し」「被疑者」の「処罰を求める」のは「刑事告発」です。
なお、被害者の「犯罪の申告」で、「処罰を求めていない」ものは「被害届」です。

なお、告訴がないと起訴できない犯罪は「親告罪」と呼ばれます。プライバシー性が高く、告訴による二次被害が想定しうる犯罪(名誉毀損、強姦など)、一般的に軽微なもの(器物損壊など)があります。


 さて、「告訴」なのですが、弁護士は、告訴を依頼されて、代理人として告訴することがあります。
 私は、刑事事件はあまり扱いませんが、これまでに2度、告訴の代理人となったことがあります。両事件とも、被害者は法人でした。

 一度は、完全な取り込み詐欺で、告訴はしたものの、被疑者所在の確認ができないので、告訴の取消(告訴は「取消」するもので、「取下」するものではありません)2年程度経過して告訴の取消を警察から求められ、どうしようもないので「取消」しました。

 もう一度は、従業員の使込み(業務上横領)で、結構時間がかかりましたが、逮捕・勾留のうえで起訴されて、執行猶予の判決がでました。被告人の弁護人から、弁償の話があり、起訴された分の被害額全額を示談金として受領しました。まったくの「ヒラ」の従業員で、数十万円単位の示談金でした。


 一般に、警察・検察は、警察が立件している親告罪の被疑事件を除いて、あまり「告訴」を歓迎しない傾向にあります。
 理由は、「筋が悪い」ということと、警察の人員不足のため事件数が多すぎて処理できないということです。


 「筋が悪い」という理由の一つは、刑事告訴が、民事紛争の解決に「利用」されているのではないかということです。

 特に、弁護士が代理人になっている場合に多いのですが、背景に民事紛争があり、告訴人の「本音」は、被疑者の処罰ではなく、刑事手続きを利用して、民事紛争を解決しようとしているということがあります。
 さんざん捜査させられて、いよいよ、逮捕・勾留という段階になって、示談契約が締結され、被疑者から告訴者にお金がわたると同時に、告訴の取消がなされ、警察官が「弁護士に利用された」と地団駄を踏むことがあるようです。
 私などは、警察官から「先生は、逮捕したとたんに示談をして、告訴の取下をしないでしょうね」と念を押されたことがあります。

 「筋が悪い」というもう一つの理由は、本当に犯罪があったのかどうか疑わしいという点です。
 これは、本人告訴に多いのですが、(1) 親子、兄弟間、あるいは近隣住民の民事上のトラブルを刑事事件に仕立てて告訴してくる、(2) 男女間の民事上のトラブルを刑事事件に仕立てて告訴してくる、(3)単なる告訴マニア、以上の類型に大別されます。

 (1)の親族、近隣住民の告訴は「しぶしぶ」ながら、双方の事情を聞いて、「これは、民事上の事件なんだから、弁護士さんのところへ行って相談して訴えてもらったら」と説得して、告訴の取消を勧告するのが通常のパターンです。
 弁護士会や地方自治体の法律相談に行くと、この手合いに出会います。
 弁護士も、心得たもので、無理に何とかしようとせず、「そこまでいうのなら、弁護士会で弁護士紹介してもらうという制度がありますよ」と言い、結局「たらい回し」ということが多いです。
 もっとも、中には、家庭内暴力などが繰り返されていたりする深刻な事案もあり、警察が見逃すと、大変なことが生じる場合もありえます。

 (2)の男女間のトラブルは、結婚するしないのトラブルで、強姦されたなどと告訴したり、子が親の手前、同意のうえであるにもかかわらず、強姦されたと言い、親が告訴したりするのです。
 これも、本当の事件がまざっているので、慎重な捜査が必要ですが、いい歳をした女性が男性と一緒にホテルの部屋に入っておきながら、強姦されたという告訴をする場合もあり、警察官、場合によっては、送検を受けた検察官自身が、告訴の取消の説得をするということになります。
 
 (3)の単なる告訴マニアの告訴は、適当にあしらって、被疑事実なしという意見をつけて送検し「一丁あがり」と処理するのが賢いようで、無理に、告訴の取消を勧告することは、告訴マニアを喜ばせるだけです。


 最後に、警察の人員不足による捜査能力ですが、事案にもよりますが、現実として、本当に限界のように思います。
 「いくら時間がかかってもいいですか」と依頼者に確認してから、告訴の受任をするようにしています。
 極端な話、時効直前まで、捜査に着手されない場合があります。

 なお、私の経験では、一般の方の告訴はともかく、弁護士が代理人の場合、事実上の「告訴受理拒否」はないように思います。
 私などは、「やりたくないと言っているものを、無理矢理やらせても、ろくな結果はえられるばずはない」という考えから、「法律では告訴受理拒否などありえないから」などと言って、無理押しするのは賢明ではないと思います。
 なお、捜査してくれるかどうかは別として、法的にいえば、書留郵便(できれば内容証明郵便)で、告訴状を郵送し、資料を別便で書留で送れば(法的には、告訴状だけで十分です。本当に、捜査してもらいたいのなら、資料をつけるのが通常です)、「受理扱い」になることは間違いありません。

西野法律事務所
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