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2015年~2017年バックナンバー

年金と所得代替率

 厚生労働省は、平成26年6月3日、公的年金の財政検証結果を公表しました。
 
 平成16年(2004年)の年金改革で、将来の人口や雇用、経済見通しを踏まえ、おおむね100年間の公的年金財政や支給水準を少なくとも5年に1度検証することが義務付けられています。
 
 「所得代替率」がメイン・テーマです。
 
 「所得代替率」とは、ボーナスを含めた現役世代の平均手取り収入に比べ、月にどれだけ年金を受け取れるかを表す数値です。
 
  引退したら、現役時代の何パーセントの年金が受取れるかの指数ですね。
 
 ちなみに、平均賃金で40年間厚生年金に加入した夫と、その間に専業主婦だった妻の世帯をモデルとし、夫婦合計での受給水準を示します。
 
  ですから、年金は「夫の厚生年金」+「夫の老齢基礎年金」+「妻の老齢基礎年金」となります。
 
 平成26年(2014年)度の標準的な世帯の代替率は62.7%です。
 
  現在、月額23万円程度です。
 
 
  厚生労働省の試算では8つのケースを示しています。
 
8つのケースのうち、女性や高齢者の就労が大幅に進む5つのケースでは40年代半ば以降、代替率が50%を維持するとの結果でした。
 
 高齢者や女性の労働参加が進まない3つのケースでは、代替率は50%を割り込む計算となりました。
 
 もっとも、8つのケースのうち「最悪のケース」とされているケースが、一番「現実的」で、他は「非現実的」「夢物語」と考えるのが相当でしょう。
 
最悪のケースの前提は、以下の通りです。
1 女性は、現在と同様の仕事をする
2 高齢者は、現在と同様の仕事をする
3 物価上昇率は、毎年0.6%
4 実質経済成長率は、毎年マイナス0.4%
5 賃金は、名目額が毎年1.3%ずつあがる(実質賃金上昇率0.6%)
6 国民年金の積立金の運用は、毎年2.3%
 
  このところの経済情勢からすれば、これでも「甘い」ような数字です。
 
 賃金が1.3%ずつ上がり、国民年金の積立金の運用が2.3%ですから、現実が、これより悪いと言うことも十分考えられます。
 
 それでも、「所得代替率」は、現役世代の手取収入の約35~37%にとどまり、国民年金の積立金は、約40年後の2055年度になくなると試算されています。
 
 なお、所得代替率が、現役世代の手取収入の約35~37%にとどまるということは、ざっくりと言えば、今の物価で、夫婦あわせて13万円です。
 
  年金収入だけでは絶対生活できないことを意味します。
さらに問題があります。
 
 平成25年度第3四半期における国民年金の積立金は128兆5790億円ですが、これが、2055年度になくなるという試算がなされていることです。
 
 国民年金の積立金は、年金拠出者の拠出額が、年金受給者の受給額より大きかったことによる貴重な積立金です。
現在は、税金負担分を除けば、「年金受給者の受給額」=「年金拠出者の拠出額」+「国民年金の積立金の取崩額」で、現在、保険料収入が少ない中で、満額年金給付ができているのは、過去の積立金のおかげです。
 
 国民年金の積立金は、約40年後の2055年度になくなるとすれば、2055年度以降は、その年の保険料収入と国庫負担で年金支給を賄うという「その日暮らし」となってしまいます。
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