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2018年バックナンバー

雑記帳

特例判事補

 当事者にとって、裁判官の年齢が、いくつくらいかは気になるようです。
 
 
 今は、修習制度が変わっていますが、新司法試験導入前は、地方・家庭裁判所の一番若い裁判官(大学で浪人しておらず、司法試験は在学中(4年まで)に合格)は24歳、5年経つと単独事件ができるようになりますから、単独で地裁や家裁の訴訟や家事審判ができる一番若い裁判官は29歳です。
 
 私自身、民事事件の単独事件の担当をはじめたのは29歳の時です。当然判事補でした。
 
 昭和23年に定められた「判事補の職権の特例等に関する法律」という法律があります。
 
 1条に「判事補で裁判所法42条1項各号に掲げる職の1または2以上にあつて、その年数を通算して5年以上になる者のうち、最高裁判所の指名する者は、当分の間、判事補としての職権の制限を受けないものとし、同法第29条3項(同法第31条の5で準用する場合を含む)及び36条の規定の適用については、その属する地方裁判所又は家庭裁判所の判事の権限を有するものとする」。
 
 指名された判事補は「特例判事補」といわれます。
 
 判事補任官5年経過すれば(6年目から)、留学中や他官庁や民間に出向中の裁判官を除き、最高裁判所は全員を特例判事補に指名します。留学中や出向中の判事補は、帰国したり、出向先から戻ったときに、最高裁判所から、特例判事補に指名されます。
 
 何のことはない、判事補10年と定まっていますが、実質的に判事補5年で判事の仕事をすることになります。
 
 なお「当分の間」とありますが、70年以上続いています。常識的に考えて経験が5年あれば単独はできますね。
 
 制限は、高等裁判所(特殊事件を除き3名の合議体)の裁判長になれないこと、高等裁判所の3人の裁判官のうち2名同時に入れないことくらいです。
 
 高等裁判所の裁判官(職務代行という辞令をもらいます)もできます。
 通常、小さな高等裁判所の判事不足を補うため、ある程度の期間の病欠の高等裁判所裁判官のピンチヒッターとして、あるいは、地方裁判所で1人で仕事をさせておくのが「不安な」裁判官の場合もあります(仕事は平均的にできますが、政治思想が偏った方などです。単に事務処理が遅いだけなら、事件の少ない支部に配属したり、家庭裁判所の交通の少年事件を担当させればいいことになります)。出世コースの逆です。
 
 地方裁判所の合議体の右陪席になることはもちろん、裁判長として仕事をすることも可能です。
 
 合議体で審理できる地方裁判所支部の支部長が特例判事補の場合、支部に3名の裁判官がおらず、本庁や他の支部からの填補をうけて3名にすることがありますが、裁判長は支部長である特例判事補です。
 
 部総括のある程度の期間の病休などの場合も、特例判事補が裁判長を務めることがあります。
 
 裁判所法29条3項に「各地方裁判所の裁判官会議は、その全員の判事でこれを組織し、各地方裁判所長が、その議長となる」と定められています。
 
 原則として、判事補は裁判官会議の構成員ではなく、議決権はありません。出席するとしたら、単なるオブザーバーです。
 
 判事補の職権の特例等に関する法律1条により、判事補は裁判官会議の構成員となることが明記されていますから、その意味でも、判事補6年目から1人前の裁判官となります。
 
 残念ながら、報酬は上がりません。
 グリーン車利用の旅費ももらえません。
 
 家庭裁判所はどうなっているのでしょうか。
 
 まず、家事部から見てみましょう。
 
 家事審判法5条1項に「家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、合議体の構成員に命じて終局審判以外の審判を行わせることができる」2項に「前項の規定により合議体の構成員が行うこととされる審判は、判事補が単独ですることができる」となっています。
 
 家事事件を合議で扱うことはまずありません。
 
 ですから、特例のつかない判事補は、家事審判官としての仕事はできません。
 
 また、家事事件は、非訟事件といわれています。非訟事件は、判事(特例事補を含みます)でないとできません。
 
 家事審判官は、判事補としての経験が5年以上あるということになります。
 
 ただ、30歳前の裁判官に、離婚事件の担当をされたのでは、当事者も困惑するでしょう。
 30歳前後の特例判事補は、民事や刑事の単独事件と合議の右陪席を担当することが多いようです。
 
 少年事件は、少年法4条で、少年院送致なども含め、未特例判事補が審判することができます。
 
 逆送といって、刑事処分相当として検察官に事件を戻すのは(審理中成年になった場合は除きます)、未特例判事補ではなしえず、判事・特例判事補に配点替えされます。
 
 ただ、普通は、経験2年未満の判事補に、少年事件を担当させるという扱いはされていないようです。
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