本文へ移動

2018年バックナンバー

雑記帳

キセルと犯罪

 キセルは何罪になるのでしょうか。
 
 不正乗車を「キセル」と呼ぶ理由ですが、「両側」にしか「金」がかかっていないとの説が一般的です。
 
 最低区間の切符(お金がかかっています)を購入して入場し、途中には金をかけず、定期券(お金がかかっています)などで出場するのが、典型的な手口でした。
 
 ちなみに、平家物語に登場する薩摩守平忠度(さつまのかみ・たいらのただのり)から、俗語で電車などのただ乗り(無賃乗車)のことを、「薩摩守」と呼びます。
 
 自動改札機の普及で、入場の際、電車で紙の切符に鋏をいれてもらったり、スタンプを押してもらうことはなくなりました。よほどの田舎に行かない限り・・
 
 自動改札機の場合、定期券に入鋏記録(入場記録)がないと、定期券で出ようとしても出られません。
 
 駅員の改札を受ければ詐欺罪です。
 刑法246条には、以下の定めがあります。
 「1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
  2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」
 現実に物をだまし取るわけではなく、運賃・料金を免れるわけですから、刑法246条2項の詐欺利得罪にあたります。法律家は、通常「2項詐欺罪」と呼びます。
 
 これは、駅員をだまして、運賃・料金を免れるからです。
 
 これに対して、鉄道営業法での処罰しかできない場合があります。
 鉄道営業法29条には以下の定めがあります。なお、罰金等臨時措置法で「50円」は「2万円」になります。
  「 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ50円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
  一 有効ナ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ」

  無人駅から入って無人駅から出たのでは、駅員の関与がありません。
  有人駅から乗車しても、「途中で無人駅で出ることにした」と言われれば、反論の仕様がありません。
 
  駅員から改札を受けた場合にだませば詐欺でしょうが、無人駅ですから、改札にくるほどのヒマはないでしょう。
 
 問題は自動改札機ですね。
 「駅員」を「騙した」かどうかが問題です。
 
  入場記録がないため自動改札機からでられず、「紛失した」と騙そうとすれば詐欺・詐欺未遂罪ですね。
 子供用の切符ででようとして、駅員にとがめられ、騙そうとすれば詐欺・詐欺未遂罪ですね。
 駅員の関与がないときは、詐欺罪ではなく、鉄道営業法違反の罪が成立するというのが、私の考えです。
 
 これは、永遠の議論のテーマだと思います。詐欺罪で起訴されることはまれですし、最高裁判所まで争われることは考えにくいですから、「ケリ」がつきません。
 
 まちがいないのは、いずれにせよ起訴されれば「前科」がつくことです。
 
 ちなみに、不正乗車をすると3倍の運賃・料金を取られることは法的に間違いありません。
 旅客営業規則264条には、以下のとおり定められています。
 「 旅客が、次の各号の1に該当する場合は、当該旅客の乗車駅からの区間に対する普通
 旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃とをあわせ収受する。
  係員の承諾を受けず、乗車券を所持しないで乗車したとき」
 
 定期券でキセルをしていると、何十万円の請求を受けることがあります。
 
 ちなみに、ドイツなどでは、地下鉄や近郊電車は改札・検札がないことから、1度発覚すれば、50倍ほどの「罰金」をとられます。
TOPへ戻る