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2019年バックナンバー

雑記帳

韓国の日本産水産物輸入規制WTO不当ではない

 平成31年4月12日、WTOの紛争処理上級委員会は、一審に当たるWTOの紛争処理小委員会が平成29年2月に公表した報告書で、韓国の禁輸措置が協定違反に当たるとの判定について、韓国の禁輸措置が協定違反に当たらないと判断しました。
 
 日本の逆転敗訴ということになります。
 
 現在、福島第1原発事故を受け、日本からの水産物について、輸入規制が残っている国と地域、輸出に必要な手続を課している国や地域は、以下のとおりです。
 
(アジア)
中国
韓国
シンガポール
香港
マカオ
台湾
フィリピン
インドネシア
ブルネイ
(ヨーロッパ)
EU及びEFTA加盟国すべて
(オセアニア)
仏領ポリネシア
(北南米)
アメリカ
(中東)
アラブ首長国連邦
アブダビ
ドバイ
イスラエル
レバノン
ロシア
(アフリカ)
エジプト
コンゴ民主共和国
モロッコ
 
 韓国政府(朴槿恵大統領当時)は平成23年3月の福島第1原発事故を受け、福島など東北や関東計8県の一部水産物の輸入を禁止し、平成25年9月6日、8県の全ての水産物を輸入禁止にしました。
 
 2020年夏のオリンピック・パラリンピック開催地が東京に決まった平成25年9月7日を狙撃ちにしたものとみられています。
 韓国のもくろみは奏功しなかったことは、ご存じのとおりです。
 令和2年8月には、東京で、夏のオリンピック・パラリンピックが開催されます。
 
 日本は平成27年、韓国の措置は、科学的根拠がなく、不当な差別だとしてWTOに提訴していました。
 相手方を韓国1国にしぼった理由はわかりませんが、輸出量が多いことかと思います。
 
 平成29年10月17日、WTOの紛争処理小委員会(1審に相当)の判定が出ました。
 「日本産の食品が科学的に安全で、韓国の安全基準を十分に満たしている」「日本は韓国に対し、不公正な禁輸措置として対抗措置を取れる」という判断でした。
 
 しかし、平成31年4月12日、WTOの紛争処理上級委員会は、「日本産の食品が科学的に安全で、韓国の安全基準を十分に満たしている」としながら、「日本は韓国に対し、不公正な禁輸措置として対抗措置を取れない」として逆転の判断をしました。
 
 判断の理由についても、なぜ、判断が逆転したのか、判然としません。納得できる説明をしている日本語の記事はありません。

 朝鮮日報・平成31年4月13日付記事に水産物禁輸、一審覆したWTO判決に韓国専門家も驚き「意外だ」とするくらいですから。
 
 なお、WTO上級委員会の定員は7人のところ、必要な委員の数がぎりぎり3人となっています。これは、トランプ大統領ひきいるアメリカ政府のWTOに対する不満のため、欠員が補充できないからとされています。
 
 また、WTO上級委員会の定員が3人しかいないところ、日本からの水産物について、輸入規制が残っている国、輸出に必要な手続を課している国を出身国とする委員が2人、輸入規制が残ってない、また、輸出に必要な手続を課していない国を出身国とする委員が1人という構成の結果ともいわれています。
 
 アメリカ、EU及びEFTA加盟国(各個別に判断できません。1国に入ればチェックなしに他国に入ります。)すべてが、日本からの水産物について、輸入規制が残っている国、輸出に必要な手続を課しているということです。
 
 委員の国籍についての資料はありませんが、先進7か国(G7)の構成国のうち、当事者の日本は除外されるとして、カナダのみが輸入制限をもうけず、他の5か国は輸入制限をもうけているとすれば、結論が偏っても不思議ではありません。
 
 「日本産の食品が科学的に安全で、安全基準を十分に満たしている」とする判断は上級審でも維持されています。
 
 しかし「日本は、不公正な禁輸措置として対抗措置を取れない」という上級審の結論となります。
 
 「科学」と「感情」は別なのかも知れません。
 「安全」と「安心」は別ですね。
 
 全く別のたとえで申し訳ないのですが「食器に放尿する行為」は「食器を食器として使用することを難しくした」(大審院・明治42年4月16日判決)という判例があります。現在も、生きている判例です。
 
 尿が付いた食器でも、ちゃんと洗えば尿はとれます。また、尿に毒性はありません(昔は、人糞を肥料にしていたくらいです)。
 
 科学的にみれば「食器に放尿する行為」は、食器を利用することに問題ありません。
 
 ただ、放尿された食器は使いたくないという感情は重視されるべきとされていることになります。
 
 科学は万能ではありません。
 韓国への輸出は、ホヤがメインだったそうです。
 被災地の漁業関係者には気の毒ですが、輸出に回らない分、日本人は、安く食べられるメリットはあるということになるでしょう。
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