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2019年バックナンバー

雑記帳

因果関係

 その昔、スモッグの多い順番に都道府県を並べ、長寿の順に都道府県を並べて、当時スモッグの多かった東京都と、スモッグがなく平均寿命が低かった沖縄県を比べて「人間はスモッグが多いと長生きする」という誤った主張する人もあると述べた学者がいました。
 
 もちろん、この学者の言わんとすることは「東京都は、スモッグが多いかも知れないが、収入が高く、いいものを食べ、医療技術も進んでいるから長寿となり、沖縄県は、スモッグはないかも知れないが、収入が低く、いいものが食べられず、医療技術も後れているから寿命が短い、だから、結果だけを見て結論づけるのは誤りで、その原因を考えなくてはならない」というものでした。
 
 もちろん、いわゆる「いいもの」が健康にいいのかという問題もあり、乳幼児の医療を含めた都道府県の医療技術の格差も少なくなっていますし、また、死亡原因の多くが、癌、脳卒中、心筋梗塞、自殺となれば、あまり医療技術は寿命に影響しなくなっているのかも知れません。
 「都道府県別平均余命」  
 
 因果関係についての誤りは、いろいろパターンはあるようです。
 
(1)時間的前後関係と因果関係の混同
  時間的に前に起こったことを後におこったことの原因だと主張するものです。
 「1812年に米英戦争が起こった。このため、ナポレオンはロシアに侵攻した。」
 2つの事件の間には直接の因果関係はないですね。
 
(2)嘘ではないが重要ではない原因の過大評価
  これは確かにある結果の原因の1つではあるが他の原因に比べると重要ではないものを過大評価することです。
 「天下り官僚の特殊法人からの給与により年金が減った」
 統計的には、戦後、厚生年金と国民年金の保険料として徴収された約500兆円のうち、約6兆9000億円が年金給付以外に使われているということです。
 従前の年金受給者に大盤振舞いをしすぎたのが主たる要因ようです。
 
(3)原因と結果の取り違え
 これは因果関係を実際とは逆に主張することです。
 「お金を借りたから生活が苦しくなった」
 通常は、生活が苦しくなったからお金を借りたのであるから誤りですね。
 もっとも、弁護士から見ると「お金を借りたから生活が苦しくなった」が「正解」という人を結構見ます。
 因果関係については、表面的なことだけを見るのではなく、できるだけ多くの要素を精査・検討することが必要です。
 
 もっとも、結構、弁護士は「知っていながら」、「相手の弁護士に気付かれず」「裁判官にもばれない」という期待のもとに因果関係についての自分に有利な主張をすることがあります。
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