身近な法律問題









キセルと犯罪

 新大阪から博多まで新幹線に無賃乗車したとして有罪判決を受けた無職の男(46)が、判決翌日に九州新幹線に再び無賃乗車し、鉄道営業法違反の疑いで鹿児島県警に現行犯逮捕されました。

 東京駅で新幹線に無賃乗車し博多駅で検挙され、鉄道営業法違反で逮捕、裏付けの取れた新大阪―博多間について起訴され、平成23年5月31日、福岡簡裁から罰金2万円の判決を受けて釈放されました。しかし、翌6月1日、博多駅で九州新幹線に鹿児島中央駅でまで再び無賃乗車し検挙されたそうです。

 キセルは何罪になるのでしょうか。

 不正乗車を「キセル」と呼ぶ理由ですが、「両側」にしか「金」がかかっていないとの説が一般的です。
 最低区間の切符(お金がかかっています)を購入して入場し、途中には金をかけず、定期券(お金がかかっています)などで出場するのが、典型的な手口でした。

 ちなみに、平家物語に登場する薩摩守・平忠度(さつまのかみ・たいらのただのり)から、俗語で電車などの「ただ乗り」(無賃乗車)のことを、「薩摩守」と呼びます。

 自動改札の普及で、入場の際、電車で紙の切符に鋏をいれてもらったり、スタンプを押してもらうことはなくなりました。
 自動改札の場合、定期券に入鋏記録(入場記録)がないと、定期券で出ようとしても出られません。

 駅員の改札を受ければ詐欺罪です。

 刑法246条には、以下の定めがあります。
 「1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
  2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」
 現実に物をだまし取るわけではなく、運賃・料金を免れるわけですから、刑法246条2項の詐欺利得罪にあたります。法律家は、通常「2項詐欺罪」と呼びます。
 これは、駅員をだまして、運賃・料金を免れるからです。

 これに対して、鉄道営業法での処罰しかできない場合があります。

 鉄道営業法29条には以下の定めがあります。なお、罰金等臨時措置法で「50円」は「2万円」になります。
 「 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ50円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
  一 有効ナ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ」

 無人駅からは行って無人駅から出たのでは、駅員の関与がありません。
 有人駅から乗車しても、「途中で無人駅で出ることにした」と言われれば、反論のしようがありません。
 駅員に検札を受けた場合にだませば詐欺でしょうが、無人駅ですから、検札にくるほどのヒマはないでしょう。

 問題は自動改札ですね。
 「駅員」を「騙した」かどうかが問題です。
 入場記録がないため自動改札機からでられず、「紛失した」と騙そうとすれば詐欺・詐欺未遂罪ですね。

 駅員の関与がないときは、詐欺罪ではなく、鉄道営業法違反の罪が成立するというのが、私の意見です。

 これは、永遠の議論のテーマだと思います。詐欺罪で起訴されることはまれですし、最高裁判所まで争われることは考えにくいですから、「ケリ」がつきません。

 まちがいないのは、いずれにせよ起訴されれば「前科」がつくことです。

 前記の例だと罰金2万円ずつです。

 ちなみに、不正乗車をすると3倍の運賃・料金を取られることは法的に間違いありません。
 旅客営業規則264条には、以下のとおり定められています。
「 旅客が、次の各号の1に該当する場合は、当該旅客の乗車駅からの区間に対する普通旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃とをあわせ収受する。
 係員の承諾を受けず、乗車券を所持しないで乗車したとき」

 定期券でキセルをしていると、何十万円の請求を受けます。
 ちなみに、ドイツなどでは、地下鉄や近郊電車は改札・検札がないことから、50倍ほどの「罰金」をとられます。



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